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第3話
「正直勉強も好きじゃないし、ちゃんとした友達もいないし、学校なんて面倒なだけだから辞めようと思ってたんだよ。だけど先生に会って、好きになって、そしたら先生に会うために学校に来ようと思えるようになった。それっていけないこと?」
諭そうとする俺の言葉にかぶせ、近衛くんは真剣な表情でそんなことを言う。その気持ちは、先生としたらすごく喜ばしいものだ。
どんな理由であれ学校に来たいと思って、実際来てくれている。それ自体はとても嬉しいんだけど。
「いけなくないし、それは嬉しいよ。でもね、それは人間として好きなのであって恋愛の意味じゃ……」
「……先生で抜けんのに?」
先生として間違いは早いうちに正しておかなきゃ、と思った俺の言葉に再度かぶせて、近衛くんが声を潜める。眉根を寄せて怪訝な表情を作られ、思わずまばたきを返してしまった。
「え、ぬ……なに?」
「なにそれ天然? それとももしかしてわかんない?」
クエスチョンマークが飛びまくっている俺の反応を見た近衛くんは、同じようにきょとんとした顔をして、それから小さく笑った。
その笑みの意味を問う前に、近衛くんがひょいとでも音がしそうなほど軽々とテーブルを飛び越し、俺の肩に手をかけ。
「お、わ?!」
意外なほど強い力をかけられてソファーの上に倒れ込むと、すかさず近衛くんが俺の足の間に体を滑り込ませてきた。そしてそのまま覆いかぶさってこられ、あっという間に身動きが取れなくなる。
「こうやって、先生を押し倒してヤる妄想して一人ですんの。先生が俺の腕の中でよがってんの妄想するとめちゃくちゃ興奮する。これって恋愛の意味の好きってことだろ?」
「ちょっ、こ、こ、近衛くん……!?」
その言葉の意味をわかりやすく体感させられて、声が驚きに上擦る。
そりゃあ毎日のように口説かれてはいたけれど。てっきり先生としてナメられているせいでの軽い戯れだと思っていたから、まさか本当に性的な対象として見られているとは思わなかった。
しかもそれは好きの証明というよりも若さゆえの欲望の発露ではないだろうか。
「と、とりあえずどきなさい」
慌てて覆いかぶさる体を押しても少しも動いてくれない。ムキムキなイメージはないけれど、触ってみると意外としっかりした体をしているんだな……って、そうじゃなくて。
「想像は何度もしたけど、実際の景色が一番いいな」
収まりのいい位置でも探しているのかそれとも他の目的があるのか。近衛くんの手がもぞもぞと探るように体に触れるから、その手を掴んで押し戻そうとするもまったく意に介されない。俺だって身長はあるし特別細いつもりはないのに、基本的な体力差だろうか。それともこれが若さなのか。
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