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第5話
ただ、たくさん居るお客さんの興を覚まさないようにさっきユリさんが上げていたような声を「それらしく」上げていた。
ただ、お尻にあんなおっきなものを挿れられる恐怖には身が竦んでしまっているのが現状だった。
怖くて怖くて仕方がない。
ただ、お尻にローションを塗り込められたら、ジンジンと熱く疼いてしまっている。
すると、栞お姉さんがこんな喧噪にも関わらず良く通る綺麗で、そして威厳のある声で言い放ってくれた。
まさに鶴の――しかも丹頂鶴と言った趣きの――「一声」と言った感じで。
「この場に女が出るなんて無粋なコトはしないわよ。
美しい人達が愛し合う姿は素敵だもの。それを見ているだけで充分。
さ、リョウ、お願いね」
何だかシェイクスピア劇で朗々と響くような綺麗な声でそう背中を押してくれた。
そして、僕もカッコいいと思っていたリョウさんがバランスの良い長身を凛と伸ばして立ち上がっていた。
僕の身体、特に胸とかお尻の穴とかを熱の籠った眼差しで見詰めてくれているのも、何となく気持ちが良い。
視線の熱で身体がカっと火照ってしまった。
――あの人ならば、抱かれても大丈夫――そういうふうに思えてくる。
何と言っても栞お姉様の「王子様」だし、その画像を見てから僕も好きだと思っていた。
ただ、接点もない上に一生会えない人だと思っていたから、テレビの中にいる芸能人と同じような感覚だったけど。
僕のお尻の穴とか乳首から離れていく。お尻の穴に入れられた太い指が抜かれて本当にホッとしたんだけど。
ただ、胸とかお尻の穴もジンジンと疼いていて、そしてリョウさんが僕を抱いてくれるという新たな期待で更に熱くなってしまっていた。
栞お姉様の指示に従っているスタッフが舞台の上に胡蝶蘭を敷き詰めている。
綺麗と言えば綺麗なんだろうけど、僕にはその美しさを愛でる余裕なんてなくって、ただ、「ショー」の見栄えというかどうやったらこの背景の豪華なセットに映えるような「お芝居」が出来るのかだけを考えたい。
ただ、初めての行為、しかもリョウさんが相手なので、僕の身体がどうなるのかは分からなかったけれども。
そしてリョウさんが舞台に上がって来て、観客に聞こえないように僕の耳に囁いてくれた。
「朝とかに用を足すだろう?大きい方の。
あれと同じような動作をすれば大丈夫だから」みたいなことを。
ああ!そっかとストンと腑に落ちてしまった。
この人だって、ぶっちゃけたところ、僕のことなんてどう扱ったって良いハズだ。だってこれはショーだし(多分)この場に立つだけのお金は払ってるだろうから。
僕はリョウさんの言葉に従ってお尻の力を「そういう」風に込めて行った。そのお尻の穴をリョウさんの長くて手入れの行き届いた指が煽るような感じで動いていく。さっきからジンジンと疼いているトコがさらに熱を帯びて僕の身体の奥が融けそうな感じというか……。
それも物凄く気持ちが良い。
思わず、リョウさんの首に腕を回してしまった。
そしてスパイシーでセクシーな香りのするリョウさんの引き締まった身体の熱とか硬さを確かめて安堵感に包まれてしまっていた。この人に任せておけば大丈夫だという強い確信がこみ上げてくる。
それに(僕の初めての人がこの人で良かった!)と心の底から思った。
さっきまでの揶揄に満ちたからかいというか悪意なんて微塵も感じられなかったし。
何だか本当に恋人同士が過ごす最初の夜――と言っても僕にはドラマとかでしか観たことないケド――と言った感じで心の底がツーンとするような甘酸っぱさに満ちて行って。
ただ、やっぱりこれはショーなので、観客の皆様のことを考えないといけないんだとも思いながら。
乳首をリョウさんの長い指が円を描くように動いている。あくまでも慎重そうな感じで、僕の反応を確かめているっぽい。
やっぱりこういう時にはちゃんと感じていることを伝えないといけないのかなぁと思って、さっきまではユリさんの真似というか、ユリさんならこう言うだろうな……っていう計算ずくで声を上げていたのを止めて、キチンと感じたままを言おうと思った。
「ああ……イイ……それ……感じる」
さっきまとは違って心の底からそう思った。
お尻の穴が熱くてジンジンしているのを冷ましてくれるような、そしてもっと熱が上がっていくような変……違うかな、物凄く良い感じではちみつ色の眩暈がする。お尻の穴も、そしてローションを塗り込められた乳首も熱く切なく疼いている。
さっきまではその疼きも違和感しか抱けなかったのに、リョウさんが触ってくれるのかと思うと全然違った期待感に変わっていて。
そして、リョウさんの首に腕を回したまま――ただ、これは二人きりで過ごしている「恋人とのそういう行為」とは違うということもちゃんと覚えておかなきゃと思いながら、何となくリョウさんとこんなことをしていると僕だって何だか勘違いしそうだし、これからどうなっていくのか分からなかったけど、やっぱりこれはショーなんだから!とキチンと弁えておきたかった――自分のコトをちゃんと分かっている内に確認したかった。
「分かった。出す感じでイイのかな?ほら、毎朝とかのトイレタイムに、さ」
するとリョウさんが驚いた感じで男らしく切れ上がった目が更に鋭さと熱さを増したような感じで僕を見てくれた。
ヘンだったかな?一応、リョウさんのアドバイスを分かったって言う積もりだったんだけれど……。
でも、何だか身体が先に先に走って行くような、そしてお空に上っていくようなヘンな感じは止まらない。
そして、他の誰でもない憧れのリョウさんに「初めて」のコトをして貰えるのが嬉しくて嬉しくて仕方ない。
まあ、リョウさんは栞お姉様の頼みで来てくれただけなのだろうけど……。
舞台に次々と運ばれる胡蝶蘭の白さとか紫色とかが安堵と期待の涙の膜越しに綺麗に見えた。
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