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第16話

「ユキさんの要望に賛成の方は、タブレットのホーム画面に「賛成・反対」と書いた箇所が御座いますので、そちらの方に奮ってご投票ください。  なお、落札値が文字通りうなぎ上りになっており、システムがダウンしそうなのでもう少々お待ちください。誠に申し訳ありませんがご了承ください」  え?システムがダウンしそうなんだ!!って思った。割と大容量だし今までこの店のシステムは物凄く安定してるってユリさんから聞いたことがあるし。  でも、僕が提案したショーの企画(?)が大好評なのは正直嬉しい。  このショーは僕が無理やりに出演させられたものではあるけれど、無理やりだろうが喜んでだろうが、そんなのお客様には関係ない話しだし、いったん舞台に立ったからにはちゃんとお客さんを満足させなければならないってことも知ってる。  お父様の組でも昔は賭場って言うのかな?何か近所の人とか賭博好きな人を集めて賭け事の催し物みたいなことをしていたらしい。その時も参加して下さった人がボロ負けしないように上手く遊ばせる人が居たらしいし。  やっぱりそういう「お客さん」を大切にしないといけないってお父様も言っていた。  賭場はもう流行らなくなっているし、お父様の代では開催していないらしい。だから具体的にどんな感じでお客様に愉しませていたのか知らないけど。  リョウさんの職業もお客さんを楽しませなければならないってトコでは同じなんだろう。  今もジンジンしてもげちゃいそうな乳首を転がしたり、爪で上下に動かしたりしてくれている。  その度ごとに頭にチリチリって感じの紅色の導火線が爆ぜているような気がして、唇から甘い嬌声が漏れてしまった。  でも、リョウさんにこうして触れられているのもショーが終わるまでだ。  そう思うと、タイムリミットまでの時間がこの上なく貴重だった。 「賛成が三分の二を超えましたので、年相応の服を用意させましょう。  え?そんな在庫はない……?それは困ったな……。スーツならお前達のを脱がせれば良いだけだが……」  経験もない僕の企画に賛成してくれたお客さんが三分の二も超えたんだ!それはそれで何だか嬉しい。  ユリさんは「こういうショーの企画・立案・進行に物凄く実績も有るし、水も漏らさないような完璧さよ!」とかゆっていたような記憶がある。  そんな実績のない僕が考えたコトでも良かったなんて、ちょっとホッとしてしまう。 「あら、主役の二人は中座しても構わないでしょ?近くに学生が着るような服が売っている『ジーユー』はまだ開いているわよ。  前座と言うわけではないけれども――それに集計作業も遅れているらしいのだから――誰かがその場しのぎのショーを披露すれば良いだけじゃないかしら」  栞お姉様もショーの世界とは違うけど、芸能界で大活躍中だ。映画にしか出ない女優さんなのは知っているけれど、試写会とか先行上映に来て下さったファンの人を楽しませているのかなって思った。  それに「Gユー」とかの店に――なんだろう、僕は良く知らないけど――「二人」で中座ってことはリョウさんと街を歩けるのかも!!と思うと物凄く嬉しかった。  その場しのぎで大丈夫なのかな?って思ったけど、客席では「そういう行為」を止めて目を爛々と光らせているユリさんに気付いた。  あっそうかぁ、ショーにも自信満々なユリさんはこの舞台に上がりたいんだろうなぁ……。だったら、僕はリョウさんと夜の街をデート(?)しても構わないかも。 「栞お姉さま有難う……」  リョウさんとデートという物凄くラッキーなサプライズプレゼントをくれたお姉様に感謝の気持ちを伝えた。  リョウさんは、そんな僕と栞お姉さまを見て笑顔を見せている。  胡蝶蘭の花よりも白い歯を見せて笑っているリョウさんの顔に視線は釘付けになってしまってた。  リョウさんにも誰にも分からないようにこっそりと。  じゃないとこのシンデレラタイムがなしになりそうな気がして。 「ジェントルメンの皆様、舞台に上がって良いと仰る方は是非お願い致します。  もちろん、お代金の方はお勉強させて頂きます。  主役は二人のカップルですから、出来れば複数でお愉しみ下さる男性を……」  そんなアナウンスが流れる中で、リョウさんが困ったような感じで僕を見ている。  あ!そうか。僕はジュバンしか――それもお母様が着るような正式なモノではなくてショーのために作ってある特製のヤツだ――着ていなくて、そのジュバンは今、舞台の隅っこに脱ぎ捨てられている。確かにあの恰好で街は歩けない。  どうしよう?困ったなと思っていると、リョウさんも同じ考えだったみたいだ。 「服の問題?そんなの、貴方が脱げば良いでしょう?ワイシャツとスラックスだけで良いのだから」  栞お姉様がそう助け舟を出してくれた。舞台に黒子のように立っていた人に女王様のような威厳で命じている。  助かったと思った。 「舞台に上がれば、本当に勉強してくれるのかね……。三人じゃなくとも?」  栞お姉様とリョウさんが座っていた席の隣の小父さんがそう声を掛けている。  「勉強」ってつまりは値下げして欲しいってコトなんだろう。  その小父さんはさっきからタブレットを見ていて、何だか蒼褪めているみたいだった。  ユリさんが自慢していたんだけれど、この店のスタッフが「お相手」を――なかでもユリさんは最も高い価格設定らしい――する場合にはどこの店よりも高価らしい。  リョウさんがキョトンとした表情を浮かべていたので――そういう顔も物凄くカッコいい――つい教えたくなってしまった。僕に出来ることなんてそんなにはないのだから。 「あれはね、この店のスタッフを――例のマッチョだよ――割とカッコいい系のお兄さんが誘ってたでしょ。スタッフは別料金だからきっとその金額にビックリしたんだと思う」

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