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第21話
その疑問は取り敢えず封印しておくことにした。
そして、僕には絶対に出来ないだろう、そういうトーク力とかリョウさんの華のあるっていうのかな?顔は男らしく整っている上に目の力とか全体の雰囲気が大人っぽくてとてもカッコ良い。
だからナンバー1ホストになれたんだろうな……とか思ってしまう。
横を歩いていると、皆がリョウさんの方を見ているし。そういう視線の吸引力はやっぱいスゴいと思った。
そして、僕の買い物に――それが半分は仕事(?)とゆうか義務みたいなものだろうけど――付き合ってくれている、この一瞬を大切にしたい。
お父様と仕事で出掛ける時には――もちろん、弾避けの若い衆を連れていることもあって――違った意味で視線を集めてしまうことの方が多かった。
でも、そっちの場合は「怖いモノ見たさ」って感じで遠巻きにされている感じだったし、僕が声を掛けたらサッと散っていくような雰囲気だった。ま、僕も声を掛ける積もりは全くなかったけれど。
お母さまが好きな「ローマの休日」だって王女様かも知れないと思った新聞記者さんだかがスクープ狙いで一緒に行動していた。最初の方はそんな感じで、後は淡い恋に墜ちていくんだけど。
後半部分は期待出来ないけれど……でも前半部分は同じって感じだ。
だから、この機会を与えてくれたお姉さまには感謝しよう。
「ああ、そういうトークをすればいいのかぁ。
やっぱりすごいな、リョウって。流石は僕でも知っているナンバー1ホストだ……これから色々と教えて欲しい、な」
「これから」なんてナイってことも分かっていた。けれど、一縷の望みでも良いから何とかリョウさんともっと仲良くなりたいなってゆう気持ちが抑えられなかった。
リョウさんが力強く頷いてくれたのも物凄く嬉しい。「これから」が実現できる夢の気がして。
「ユキはあの店で働いていない感じだが……?」
リョウさんの声に探るような雰囲気を感じた。僕のことを――それが単なる気紛れとか、沈黙を嫌ってとかでも全然良い――聞いてくれるだけで何だか胸が弾む。
身体の中にまだリョウさんの熱くて硬いモノが入っている感じとか歩く度に擦れてジンジンと甘く疼く乳首とか、そしてズボンの下の素肌を滴っている液体とかでさっきまで愛されていた余韻にも浸ることが出来てとっても幸せだったし。
「あそこに連れて行かれたのは今日が初めてだよ。ただ、顔見知りとか少し言葉を交わす人は意外にたくさん居て驚いた」
リョウさんにウソをつくのは後ろめたかったんだけれど、何かユリさんとかそういう「経験豊富な」人から色々と聞いていたとかは何となく言い辛かった。
ショーの最中にヤジられた「インラン」という言葉を――あれだけ気持ち良いって言ってたのは僕だし、そうゆわれても仕方ないのかもしれないんだけど――リョウさんにだけは思われたくないなとか思ってしまった。
えっと、そういう知識とかを聞きたがるのを「耳年増」って言ったっけ?そういうふうにもリョウさんに思われたくないって考える僕ってやっぱりリョウさんのことが大好きなんだなって。
リョウさんは何だかガッカリしたような雰囲気の眼差しで僕を見ている。
やっぱりインランとか思っているのかな?
「あの猫の刺青は受け狙いとも思えないが、どうせ入れるならもっと威圧感を与えるモノにすべきだと思っていたんだが……」
僕の考えていることが分かったのか、リョウさんは自然な感じで話題を替えてくれた。
猫の刺青……って。まあ、確かに猫にしか見えないんだけど何だか笑ってしまった。
僕が笑うとリョウさんは何だか物凄く優しい瞳で見てくれる。
「ああ、あれは虎を彫る積もりだったんだって……。ただ、実際に通ってみると物凄く痛くて我慢が出来なくなって……、彫り師の人に泣きついて簡素化して貰った結果ネコに見える虎になったらしい。本人は虎だって言い張っているよ」
お父さまの組では「イレズミ禁止令」が出されている。カタギの人に威圧感を与えるのはダメだからってゆう理由だと聞いていたけど。
僕だって「そういう」世界しか知らないんだけど、他人が怖がることはするべきじゃないって思っているし、お父さまの意見に大賛成だった。
けれども、イレズミに憧れる人間が居るのも事実だったし、途中で止めて猫にしか見えない虎になってしまったという中途半端さも何だか嫌だった。
僕なら最初から入れないか、死ぬ気で我慢して虎を完成させるかの二択しか選べないし、選びたくない。
まあ、この世界しか知らない僕だから普通の人から見たら違う感想を抱くのかもだけど。
服がたくさん置いてある店に入った。
こういう店に入ったこともないので――車の窓からなら看板とかは良く見てたけど――ついつい辺りを見回してしまう、珍しくって何だかワクワクする。
それに、リョウさんが隣に居てくれているのもワクワク感を高めている。
「服はどれが良いかな?」
リョウさんの適度に着崩した高そうな服もカッコいいけど、それは着ている人が物凄くカッコ良いからだろう。
ただ、初めて自分で買う――と言っても僕のお金じゃないけど――服をリョウさんに選んで欲しかった。
「ショー用なのだろう?だったら、効果的に千切れ飛ぶボタンが有った方が良いし、ユキの白くて肌理の細かい綺麗な肌が引き立つように紺とか黒系統の――そうだなデニム地とかが良いんじゃないか?
スラックスはコットンの方が脱がしやすいし、肌も傷付けない。ジーンズだと最悪の場合何か刃物のような物で切らなければならなくなるので」
あ、そっか。弾む気持ちのままリョウさんに聞いたんだけど、やっぱりリョウさんはショーのことしか考えてないんだと、心のどこかが痛むような気がした。自分勝手でワガママだとは分かっていたんだけど。
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