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第24話
「ゆっくり身の振り方を考えれば良い」ってリョウさんは言ってくれたし、実際に僕もそうする積りではいた。
「身の振り方」の相談相手にリョウさんが居てくれれば良いなって思うのはワガママだろう。
「普通」の大学生なら――僕にはピンと来ないけどマンガをPCのサイトで読んだ――リョウさんと「した」行為は「恋人同士」でするものだ。まあ、マンガなので冴えない男子生徒が物凄く可愛いしスタイルも抜群な女の子と恋人になって、デートを重ねるうちにだんだんと「その気」になっていく過程が有って、恋人としてじゃなくてチラリとでも結婚まで考えるくらいに好きじゃないとしない行為だ。まあ、ビッ〇と呼ばれる敵役で出ることが多いヒロインの友達とかはユリさんみたいに相手かまわずに「して」しまうらしいけど。
そういうビ〇チに恋人を取られそうになってハラハラしていても頼もしい恋人は結局主人公の元に現れるのがお約束みたいだった。
そういう恋人同士なら信頼関係もあるし、この先の人生相談とかも出来る。
でも、リョウさんは誰に対しても優しいだろうし、そもそも栞お姉さまが連れてきてくれただけの人で「そういう行為」も恋人同士の愛の確かめ合いが目的じゃなくってあくまでショーだった。
だから「身の振り方」なんて相談したって迷惑にしか思われないんじゃないかな?
そう思うと涙が溢れてきてしまっていて……。
頑張ってその涙を止めようとした。
そしたら、栞お姉さまのことがぽっかりと頭の中に出てきた。
僕が小学生の時のことだったんだけれど。
屋敷の廊下をお姉さまらしくなく走っていた。お姉さまの顔は真っ白だったし、なんだか白い顔に泥みたいな物が付いていた。それに、なんだか服装も乱れていたのを今までは「転んだのが恥ずかしかったのかな……」程度にしか思っていなかった。
でも、今になって栞お姉さまも僕みたいな目に遭ったんじゃないかって思ってしまった。
良く笑ったり話したりしていた栞お姉さまが何となく違った雰囲気をまとっていて、しかも話しかけるのを躊躇ってしまうようなオーラを出しているような気がしてたのも「あの」後からだった。
お母さまは「栞さんも大人になったからいろいろとあるのよ、きっと」とのんびりと言っていた。
だからその言葉を信じて記憶に蓋をした。それが今ぱあって開いてしまっている感じだった。
「有難う。そうするよ……。
シオリお姉さまももっと辛い目を乗り越えてきたんだし……」
そう言ったのは僕自身に言い聞かせるためでもあった。
リョウさんは何だか適当に詰め込んでいるのが分かる乱雑さで買ったモノをGユーと書いた袋に詰め込んでいる。
世間のことは何も知らない僕だけど、お母さまに習ったりして家事とかお稽古事――茶道とかの和の習い事が多かった――そういう点だけはきっちりと(?)躾けられていた。
どっちかとゆうと女の子っぽい習い事のような気もしていたけど、まあ、リョウさんのワイルドな動作には思わず見惚れてしまってはいた。
でもその詰め方なら後でぐちゃぐちゃになるんじゃないかなって思ったので、ついつい言ってしまった。
「Tシャツとポロシャツ、そしてジーンズや下着はこっちに入れて欲しい。
あ、やっぱりそっちは僕がするよ」
そっちは栞お姉さまがこっそりと告げてくれた大切な服だった、僕が自由になるための。
シンデレラは親切な魔女だかが綺麗なドレスとか馬車を用意してくれた。
それとは全然比べ物にならないだろうけれど、Tシャツとかジーンズや下着類はショーが終わってから着られるようにって。
リョウさんは不思議そうな眼差しでそれらの服を見ていたけれど。
シンデレラ風にゆうと、まだ12時の鐘は鳴っていない状態だ。
だって、これからお店に戻ってリョウさんとは「ショー」とはいえ「そういう行為」が出来るのだから。
僕にとってリョウさんとする「そういう行為」はシンデレラが王子様のリードでダンスをするのと同じくらいに幸せだと思う。
リョウさんじゃなきゃ嫌過ぎる行為なんだけど……。
そう思うと沈んでいた気持ちに太陽の光が射し込んで来たような感じだった。
「買い物って楽しいね。それにテレビで見るのと違って店員さんがレジって言うの?ああしたヤツで計算するのかとばっかり思っていたのだけれど違うんだね?」
正しくはリョウさんと一緒なのが楽しいだけで――と言ってもお店で買い物をするのも多分初めてなのでそれはそれで新鮮な気持ちなのも確かなんだけれど――ショー用の服よりもTシャツとかジーンズを買うことのほうが僕には楽しい。
「いや、オレも良く知らないが、行きつけの店だと目の前にレジこそないが、選んだ品物をスタッフがいったん預かり請求金額を持って来るし、コンビニなんかではレジの前まで持って行かないと買えないシステムだ」
へー!そうなんだって思った。
この店が「普通」で、テレビの向こうで起こっていることがフィクションなんだって思っていたのだけれど、どうも違うみたいで驚いた。
だって任侠モノの映画とかも見たことはあって、全然違う世界だった。
だからドラマとかではフィクションなのかな?って思っていたんだけれど。
色々と勉強になるなぁとか考えて何だかホンワカっていう気持ちになった。
リョウさんも――内心は呆れているかもだけれど――親切に教えてくれるし、とっても幸せだった。
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