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第2話

 16歳になった暎はもうこそこそと隠れることもなく、足しげく唯のもとに通っていた。といっても同じ施設の中にあるのでそれほど離れているわけでもない。  唯に会いにくるたびに、暎は膨れ上がる欲望を発散せずにはいられなくなる。ほかに方法を知らない暎は、彼を見上げて自慰をすることで己を満足させていた。  最近見た男性同士が絡まって繋がっている映像。その時に聞いた喘ぎ声を思い出す。  愛しているとつぶやいていた夏希と唯もあのように交わったのだろうか。想像するとたまらなく興奮する。  暎の頭の中で夏希に抱かれている唯。眉をよせて快感に打ち震えるその表情。滑らかな体にうっすらと汗が浮かび、痙攣するように手足が揺れる。すべて妄想だがそれは暎を夢中にさせた。  これは愛情だ。  暎はそう確信していた。  夏希以外の人間を知らない暎が欲情するただ一人の相手。  夏希に抱かれている唯は、やはりとても美しかった。  小さく呻いて精を吐き出すと、息を荒げながら暎は水槽にもたれかかった。ひんやりとして心地いい。余韻に体を震わせていると、夏希の怒ったような声が聞こえてきた。 「お前、またか。いい加減にしろ」  ゆるりと顔を上げ振り返る。夏希がつかつかと近寄ってきて、水槽にべたりと付いた精液を見て眉をしかめた。 「ああ、もう。汚すなって言ってるだろ」  夏希は暎を押しのけて机からとってきたティッシュでそれをふき取る。暎はだらしなく笑って、晒した下半身を隠すくこともなく小さく息を吐いた。 「お前な、こういうことは部屋でこっそりしろ」 「唯を見ながらしたいんだよ」  じろりと睨まれて暎は肩をすくめる。 「服を着ろ」  そう言って夏希は研究室から出て行った。  暎はふんと鼻を鳴らした。 ―――自分が教えたくせに。  もう一度唯を見上げる。  暎は彼の美しい顔を見つめながら、ここでこの行為を教わった時のことを思い出していた。

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