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第5話

 しかし成長するにつれ、何かがおかしいと感じはじめた。  自分の顔が幼さの残った唯にしか見えなくなっていく。  親子とはそういうものなのだろうか。あまりにも似すぎてはいないか。今まで見た映像や画像の中でも、ここまで瓜二つの人間は見たことがなかった。  疑問に思った暎は夏希に尋ねた。  自分は唯の子供なのかと。  あまりにも似ているがそういうものかと、問いかけた。  夏希はしばらくじっと暎を見つめ、そしてあきらめたように息を吐き出した。  暎は唯のクローンだと、そう言った。  暎はクローンという言葉を知らなかったが、尋ねてもそれ以上答えてくれなかった。だから自分で調べた。  遺伝子情報が全く同じ別の個体。コピーされて作られた生物。  暎は「生まれた」のではなく「作られた」のだ。  それが衝撃的なことかどうかも分からず、半ば呆然とし、半ば納得した。  研究室に足を運び唯を見上げる。 「俺の身体って、全部お前でできてるんだな」  小さくつぶやいて、暎はたまらなく恥ずかしくなった。  綺麗だ綺麗だと思っていた唯と外見が全く同じなのだ。とんでもないナルシストである。息を吐き出すように笑うことで恥ずかしさを誤魔化す。  自分自身に欲情しているとは思いたくないが、しかし実際ここに来て唯を見上げるとたまらなくなる。  夏希に抱かれて快感に打ち震える唯の姿を想像する。  その時はた、と気が付いた。  夏希に自慰を教えられたのは唯のいるこの場所だ。そのことも興奮する材料だった。 ―――本当に、惹かれたのは唯の艶やかな姿態なのか?  夏希に抱かれる唯を、自分と重ねていたのではないか。想像にあるような快感を、映像で見たようないやらしい行為を、夏希に与えてもらいたかったのではないか。  「愛してる」  耳もとで幼い頃聞いた夏希の声が再生される。  ぶわっと鳥肌がたった。  狂おしいほどの大きな感情が暎の中を満たした。  頭が熱であふれ、身体が震えた。  どうしようもなく夏希に焦がれ居ても立っても居られない。  しかし今、彼に会うことは、苦痛なまでの羞恥が自分の内に生まれるだろうことも想像できた。  暎は足早に研究室を出て自分の部屋のベッドの上で毛布にくるまり身体全体を覆い隠す。 ―――恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい。  己の今までの行動も、感情も、何もかもがわけもわからず恥ずかしい。 「夏希……」  彼の名前を声に出し、暎はさらなる羞恥にさいなまれた。

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