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栗崎は言葉にはできないほどの恥ずかしさで、全身に火が付いたように熱が広がる。しかもその割れ目からはすでに透明の蜜が零れ出していた。 男はそれを嬉しそうに見つめた後、顔を近づけ、舌先を伸ばす。 「あっ……!」 熱く濡れた舌に零れ出た雫を舐め取られ、栗崎は思わず声を上げた。 栗崎は自分で自分の声に驚き、そんな己の姿態に恥じ入るように大きく息を吐きながら、右手を額に当てる。 「男とこんなことするの、初めて?」 男が愉しげに栗崎に問いかける。 (くそ……っ) 抗おうにもどんどんと男のペースに飲み込まれていく自分自身が悔しく、栗崎はなんとか理性を保とうと歯を食い縛る。 しかし栗崎の反応に満悦の表情を見せた男が脈打つ陰茎に舌を這わせ始めると、それは些細な抵抗にしかならなかった。 「あ……っ!」 男は舌を動かしながらも膝元から秀麗で淫猥な瞳で栗崎の顔をじっと見上げてくる。 栗崎はその眼差しに、心まで淫らに酔わされそうになる。 「んっ…っ」 腰の奥から波のように迫る快感に栗崎は息が上がり、汗が滲みだし、もう声が漏れるのを抑えられない。ここでもかと確実に感じる場所を的確に捕える男の舌先が憎らしくもなる。 (……男同士、だからか) 栗崎は変な所に感心しながらもガクガクと震えそうになる膝を必死に支え、背後の壁に手をついた。すると、男の口が栗崎の切っ先を頬張った。 「……っ!」 何度も上下し、舌を絡ませながら吸いつき、淫らな水音を響かせながら男は栗崎を快楽の果てへと追いやろうとする。その波に飲み込まれながらも栗崎は男の顔を、その瞳を覗き見た。 口の端から唾液を零しながら、必死に栗崎の芯に刺激を与えようとしている男の姿に、栗崎は快感とは別の、名も知らぬ感情が込み上げてくる。 栗崎は荒い呼吸の合間に目の前の柔らかな黒髪にそっと触れてみる。 すると男がつっと栗崎の瞳を見上げる。 目が合う。 男は口に栗崎のものを含みながらもゆっくりと微笑んだ。 (!) 栗崎の胸がドクンと波打つ。 しかし、次の瞬間、栗崎の芯が男の手で強く扱かれ、また快楽の波に攫われる。 「うっ」 「ああ、んっ…」 そして、男の口からも興奮の喘ぎが漏らされる。男は左手で自分のものも再び扱き始めていた。 男の扇情的な喘ぎ声が栗崎の脳をダイレクトに刺激し、しだいに抗えない電流が昇り詰めていく。 「くっ、ダメだ、イキそうだ……っ」 栗崎は荒い息を吐きながら壁に背をもたせかけると、男の頭に両手を当て、そのリズムを押さえようとする。 「いいから、イけよ……」 男は栗崎の抵抗を無視しそのまま動き続ける。 「しかし……んっ」 「いいって、オレもイクから…んんっあ、」 「……くっ!」  男の喘ぎと共に唇で強く扱かれた栗崎は、逃れようもなく体を小さく痙攣させながら男の口中に自らの白濁を注ぎ込む。と同時に、男の左手の中でも欲望が弾けていた。 「はあはあ……はあ…」 ほぼ同時に達した二人は、言いようもない虚脱感と一種異様な連帯感とを帯びながら荒い息を吐いた。 栗崎は抗いながらも結局欲望を放ってしまった自分自身の不甲斐なさに落ち込む。 しかし全身は初めて感じる鋭いまでの恍惚と満ち足りた気持ちに心地よく浸っていた。 「んくっ、こく……」 その時、栗崎の眼下で自分の出した白濁を男が飲み込んでいた。 「あっ! 待て! そんなの飲むなっ!」 栗崎は慌てて座り込むと男の頬を両手で覆うが、すでに飲んでしまった後だった。 「ごちそうさま」 美しい貌に初めて無邪気な笑みが走る。 「……!」 その笑顔を見た栗崎の心臓が突然、不規則に波打った。 (こんな顔が、できるのか……) 栗崎は男の頬を両手で挟んだまま、正面の笑みの残像に魅入られてしまう。そして栗崎の顔は目の前の柔らかそうな唇に逆らえない力で引き寄せられていく。 しかし、吐息を感じるほどまでに男の顔に近づいたところで、栗崎の唇に突然、男の人差し指があてがわれる。 「俺、キスは愛してる人としかしないんだ」 男は栗崎の目を見て、ポツリと呟いた。そして、そう言った男の瞳に、あの哀しい色が見え隠れしたことに栗崎は気付いた。 「す、すまんっ!」 栗崎は途端我に返ったようにビクリと顔を離し、その場に立ち上がる。 (お、俺は今、何をしようと……) 栗崎は混乱しながら両手で頭を抱えた。ズキズキと痛むように鳴り続ける鼓動が煩わしい。

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