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3‐5
「あれでか?」
「そう、腕を。お願い……」
栗崎は腕を伸ばしベルトを取り上げると、トオルの腕を片手で頭上に纏め上げた。
そしてその二本の手首を黒いベルトで幾重かに巻き、締め上げた。
「これでいいか? きつくないか?」
「ああ、うん、いいっ……!」
栗崎の心配を余所にトオルは恍惚の表情を浮かべながら目を瞑る。
栗崎はそれを見届けると、また律動を再開した。
トオルの白い腕に纏わりつくように黒い蛇が絡みついている。
トオルとの出会いを思い起こせばこの依頼には驚かなかったが、眼下のトオルの淫らな姿態を見た自分の怒張がより強まっていることの方に、栗崎は驚いた。
そして、それをトオルに施したのが自分であることに強い快感を覚える。
「ああん!リョウイチっ、あっ、もっと…っ!」
トオルの淫らに捩られる体を抱き締め、首筋に唇を押し当てる。
「ああ、……っ、んん…」
トオルが律動の度に喘ぎを漏らす。目の端からは行く筋もの涙が零れ落ちていく。栗崎は唇で優しく雫を掬い取った。
(縛っておかないと、おまえはどこへ行ってしまうんだ……)
栗崎は胸に迫る想いをしまい込み、ただひたすらトオルに快楽を与え続ける。
栗崎もトオルも互いの汗にまみれ、どこからどこまでが自分の体なのかさえ判らないほど、二人の影は連理の枝のように絡み、繋がっていく。
「あん、…リョウイチっ、言って……」
ギシギシと鳴るベッドの上でトオルが息継ぎの合間に栗崎に声を上げた。
「リョウイチ、オレに、ひどいこと言って……」
トオルは懇願の声音でそう言って、目尻からまた涙を溢れさせた。
「どんなことを言えばいいんだ? おまえが望むなら、何でも言ってやる」
栗崎は抽送を止めることなく、眼下のトオルに囁く。
「何でもいいんだ、オレを責めて……ああっ…」
トオルが朦朧とした声でうわ言の様に呟く。栗崎はトオルの耳元の髪を撫でつけ、そこに唇を寄せる。
「もっと啼けよ。もっと大きな声で……!」
栗崎の低く、抑え切れない情動を纏った声音がトオルの耳から脳に染み入ると、その嬌声が高くなった。
「ああっ!いいっ!もっと……!」
栗崎は自分の言葉にトオルが悦び、感度を増すことを確認すると、たくさんの言葉を与えたくなる。
トオルの耳朶を噛み、淫猥に唾液の音を立てながらそこをしゃぶりあげる。
「あああっ!リョウっ」
「もっと、俺の名前を呼べ…っ」
「ああ、リョウイチっ、リョウっ…んっ!リョウイチっ……!」
「おまえのせいで胸が…苦しい…っ。おまえのせいだ…!全ておまえのせいだ……!」
栗崎は自分の切ない想いを苛む言葉に変え、トオルに伝える。
「リョウイチ……っ」
トオルは恍惚と苦悶とを混ぜ合わせた表情でギュッと目を瞑り、また涙を流す。
(トオル、何を考えて、何を想って俺に抱かれているんだ……)
栗崎はその懇願に手探りで答えながらも、トオルの真意を掴み切れず、心がざわめく。
腕の中の温もりは靄を掴むように実態がなく、どこか遠くへ霧散してしまうかのように感じられた。
「離すもんか……!」
栗崎はトオルの肩を抱くと、首筋を強く吸い、紅い痕を残す。
そして律動を強めると、太く熱い茎がトオルの一番感じるところを擦り上げた。
「あああっっ!リョウイチっ、リョウイチ…リョウっ、いいっ!」
縛られた腕で栗崎の頭を抱えるように抱き締めながら、喉を反らして綺麗な稜線を晒し、トオルの喘ぎはより高くなる。
「ああんっ、リョウイチ……!あ、やっ、オレ、またイくっ……!」
「イけよ……っ、んん、トオル……っ!」
「あああっ…あっ、んんっ、………ーーさんっ!」
トオルは自分の腹に白濁を散らしながら、誰かの名前を呼んだ。
自分のものではないその名を、栗崎は深い水の底で聞いたように感じた。
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