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(トオルは俺が医薬品の卸会社に勤めていることを知って、病院関係者である自分自身のことも知っているのではないかと恐れたんだ。そして自分が愛している男……、つまり理事長のことまで俺が知っているのではないかと恐れた……。こうして俺と会っていることが、理事長に知られるじゃないかと怯えていたんだろう……) 栗崎はそう思い至り愕然とする。 驚きと苦悩が入り混じったトオルの瞳に栗崎が告解する。 「おまえに、愛する男がいることなんて知ってた。それでもいいと、ただそばに居てくれればそれでいいと、思ってた、はずなのに……」 トオルはこうして今日も栗崎の元を訪れた。 しかし、トオルの想うその人物を目の当たりにし、事実を突き付けられることで、栗崎の心は穿たれたような強烈な痛みと共に、狂いたくなるような嫉妬心に囚われていた。 栗崎はトオルの顎から手を離し、自分を落ち着かせようと深く息を吐きながらトオルから目を逸らした。 (そう、結局は俺のことなんて……) 肩が戦慄く。 (あの男は、俺の知らないトオルをたくさん知っている……) 栗崎の知らなかった名字も仕事も日常の姿も、そしてあの笑顔も……、何よりトオルに愛されている。 あの場でもう少しトオルが長居していたら、栗崎はその腕を掴んで走り出すところだった。 「俺は……一体何なんだ?」 栗崎が苦痛に歪められた顔を上げる。 これまで聞きたくても聞けなかった問いが栗崎の口を衝いて出る。 「俺は、おまえにとって何なんだ?」 「…………」 トオルは何も応えない。 ただ苦しげに瞳を伏せる。 そして、静かに唇を開いた。 「ごめん」 栗崎の瞳が絶望に眇められた。 トオルと出会ってからの全てが、踏み躙られ、打ち棄てられた気がした。 栗崎はトオルの顎をもう一度掴み上げる。 そしていきなり、目の前の唇を自分のそれで塞いだ。 「……っ!」 トオルの目が驚きで見開かれる。 トオルはすぐさま激しい抵抗をみせた。 しかし栗崎は逆の手で後頭部を押さえつける。 トオルの拳が栗崎の肩を激しく叩いた。 「んんんっ!」 栗崎はずっとずっと触れたくて触れたくて仕方のなかったトオルの唇を、胸に迫る苦しさと切り込んでくるような切なさと、微かな期待とで貪る。 「ん、んっ……!」 顎を押さえつけ、抗う歯列を無理やりに割り、その奥に縮こまった舌先を絡み取り、吸い上げる。 角度を変え何度も何度も奥へと忍び込み、息継ぎする暇さえ与えず、空気を求めて喘ぐように開いた口内をさらに蹂躙していく。 今まで堪えていたもの全てを取り戻すかのように、栗崎はトオルの吐息までをも求めた。 「んんっ……っ」 トオルの唾液と栗崎のそれとが絡み合い、お互いの口元から零れていく。 栗崎は唇を合わせながらトオルの表情を窺い見た。 (くそっ……) トオルは、苦痛を与えられているかのように眉間を寄せ、瞼をギュッと瞑り、その端から涙の筋を作っていた。 途端、栗崎の視界が涙でぼやけた。 やはりトオルが栗崎の想いに応えてくれることはないのだ。 栗崎はトオルを突き放すように唇を離すと、さっと目元を腕で拭った。 トオルは肩で息を吐きながら栗崎を睨みつけた。 「な、なんで、こんな……!」 しかし、栗崎はそんなトオルをすぐにうつ伏せにベッドへと押し倒した。 「……っ!」 そしてその両手首を背中にまわし、自分のベルトで縛りあげた。 「リョウイチっ?」 トオルの声が怯えの色を孕んでくる。 しかし、栗崎は止まらなかった。 すぐさま起き上がろうとするトオルの背中を、栗崎は容赦ない力でベッドに押しつける。 「っ!リョウイチっ」 そしてトオルの背後から片腕を回すとベルトを外し、ジーンズを下着とともにずり下ろして臀部のみを露わにした。 そこは未熟な若い果実の様に固く引き締まっていた。 「リョウイチっ!なんでっ」

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