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振り仰ぎながら焦った声で叫ぶトオルに全く耳を貸さず、栗崎はその青い果実のような尻を掴み上げる。
そして解してもいないトオルの窄まりに、自分のすでに怒張している肉塊を一気に突き立てた。
「やああああっ!」
悲鳴に近いトオルの声が部屋中にこだまする。
「くっ…!」
引き攣る様に纏わりついてくるトオルの内部に呻きを漏らしながらも、栗崎は加減せずそこを掻き回していく。
「ああっ!……いや…っ!」
「ずっと、あの男ともヤってたんだろ?」
栗崎の欲情を纏った冷酷な声がトオルの背後に迫る。
「んんっ、やっ、なんで……」
涙声のトオルが栗崎を振り返ろうとする。
しかし栗崎は律動を速めながらその顔を押し戻す。
「んん!く、ふっ……はあ…」
トオルが絶え絶えの息を吐く。
(おまえをこの楔で繋いでおく……っ!どこにも、行かせない……!)
栗崎の思いはトオルに打ち込んだ杭へと伝わり、トオルの体により強く深い傷跡を残そうと凶悪なまでに膨らんでいった。
「もっと、もっと啼けよっ……!」
「あっ、んんっ……ああっ…や…」
「もっと、んっ、俺の名前を呼べ……!」
「ああっ、リョウイチ……っ」
嗚咽と共にトオルの口から自らの名前が零れると、泣きたい様な愛しさが込み上げてくる。
「もっとだ!」
「リョウイチっ、あ、リョウっ……リョウぅ…リョウイチ……っ」
トオルが何度も何度も栗崎の名前を呼ぶ。
「俺の名前だっ!おまえが口にできるのは俺の名前だけだ……っ!」
栗崎の鼻の奥にツンとした痛みが起こる。
どうしたら、こんなにも愛しく思う気持ちが伝わるのか。
(もうわからない……!俺はどうしたらいいんだ……自分が自分でなくなっていく……!)
「どうして……!トオル、好きだ……好きなんだ……」
栗崎はトオルに覆いかぶさり震える肩口に顔を寄せる。
そこは白く滑らかで誰にも踏み荒らされていない雪原のようだった。
しかし次の瞬間、栗崎はそこにガリリときつく歯を立てた。
「痛いっ!」
トオルが悲鳴を上げたが、栗崎は構わず歯に力を込めていく。
そこからは瑞々しい果肉を齧った時のような新鮮な香気が立ち上り、果汁が迸る気さえした。
血が滲み、赤く染まった肩を震わせながら、トオルが痛みに耐えている。
(トオル、おまえは俺のものだ)
栗崎は自分の想いを持て余し、トオルに痛みを与えることしかできなかった。
そしてそんな自分の無力さに吐き気さえ覚える。
栗崎はトオルの肩に刻みこまれた自分の歯形を眺めた後、その背を舌先でなぞり下ろした。
「ああんっ」
トオルの背筋に戦慄に似た快感が走ったのを見ると、栗崎は突き立てた己の欲望をより深くまで押し込んでいく。
「んんんっ!」
栗崎は手を回してトオルの茎を掴んだ。
そこはすでに屹立していた。
「ああ、んっ……ふっ、リョウイチっ、や……」
栗崎はそれを扱きながら、もう片方の手をトオルの胸元に滑り込ませ、小さく尖った先を力の限り抓り上げた。
「あああんん……っ!い…やっ、リョウ!」
ビクビクと痙攣しながらトオルの口元からは唾液と嬌声が零れ落ちる。
始めはきつかった窄まりも今では淫らな水音を鳴らし始めていた。
「俺だけを見ろ。もう他の男とは寝るな!」
栗崎の口からは、奥底に仕舞いこんでいた言葉が零れ落ちる。
「トオル、好きだ……なんで……俺だけを見てくれない!なんでなんだっ」
「リョウイチ……ごめんっ……ごめん…っ!」
栗崎の痛々しい感情の吐露にトオルが枕に顔を擦りつけ、泣き喚きながら声を発する。
「リョウイチ、ごめん……リョウイチにこんなことさせて……ごめん……っ!」
トオルの言葉に栗崎はギリッと唇を噛み締め、一度その塊を引き抜いたかと思うと、すぐに力いっぱい奥まで突き刺した。
「ああああっ!」
嗚咽と悲鳴とを上げるトオルの手首は激しくもがいたせいでベルトが擦れ、赤く擦り切れている。
それがまた栗崎の劣情を煽った。
「リョウイチっ、や、ああっ……!も、壊れる……よっ、リョウイチっ!」
栗崎はトオルを再び荒々しく突き上げる。
「……壊れろよ!もう、俺だけのものになれっ!」
「あああっ!だめ……っ、や、リョウイチ、オレ、もうイく……!」
「……だめだ」
栗崎の冷ややかな声がトオルの耳に届く。
栗崎はトオルの全てを自分の手の内に収めたかった。
トオルの全ての感情を、欲情を、自分のものにしたかった。
「俺より先にイくのは許さない」
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