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第7話

「お見事」  にやりと笑ったミケーレがグラスを差し出していた。  いまの一幕を見ていたのだ。 「どうも」  消毒代わりの白ワインはおいしかった。 「さすがにいいワインを出してるな」 「まあね。アランが絡むとわかってたのか?」 「ああ。船上パーティでも下らないことを抜かしてたから」 「下らないこと?」 「庶民がいるのは珍しいとかなんとか。要するにあいつ、リカルドに惚れてるんだろ?」 「というか、一度寝たけど相手にされなかったんだな」 「だろうね。あいつのセックスつまんなさそ」  あっさり言い放つ。  ミケーレは明るい笑い声を上げた。 「いいなあ、アキト。ねえ、一晩つき合ってよ」  首を傾げたアキトにミケーレは体を寄せた。髪に手を差しいれ額にキスする。 「俺なら退屈なセックスはしないよ? 一緒に遊ぼう?」  無邪気な笑顔でかくれんぼにでも誘うように囁いた。 「君をとろとろに蕩けさせて、うんと可愛がりたい」 「さすがイタリア男は口説き文句が様になるね」 「俺は本気だけど?」 「嘘ばっかり。金髪巻き毛の素敵な人がいるんだろ」 「それは先週の話。今日は君と過ごしたい」 「いいね、ミケーレといるの楽しそう」  アキトはくすくす笑う。  言葉遊びだ、本気には取っていないが寝ても構わない。  きっと楽しいセックスをするだろう。 「リカルドはいいのか? 友達なんだろ?」 「ああ、大事な幼馴染みだ。だから三人でもいいよ?」  ミケーレがアキトの顎をすくって唇にキスをする。  アキトはふわりと微笑んだ。  悪くない。遊び慣れた男は好きだ。 「いつもそんな遊びを?」 「俺とリカルドはとても仲がよくてね、よく一緒に誰かを可愛がったものだよ。最近は君ばかり構っているようだけど」 「嘘をつけ!」  低い声が割って入った。  顔を顰めたリカルドが腕を組んで立っていた。 「何がよく一緒に誰かを可愛がっただ!」 「えー、まるっきり嘘でもないだろ。よくではなかったか?」  悪びれずに暴露するミケーレにアキトは爆笑している。 「いい友達だね、リカルド?」 「そんな時代もあったかもな」 「なんだ残念。過去形なんだ」  アキトがそんな過去を気にするはずはなく、ミケーレがそれに乗る。 「いいだろ、リカルド。久しぶりに三人で遊ぼうぜ」  そんなつもりではなかったが、先ほどの場面を見てアキトに興味がわいたのだ。  抱いたらどんなふうだろう?   きっとすごく色っぽい、快楽に蕩ける顔が見てみたい。  リカルドは嫌な顔をしたがミケーレはアキトに迫った。 「アキトも俺と遊びたいよな?」 「まあね」  ムッとして睨んでもアキトは小悪魔の顔で笑うだけだ。  だから二人を会わせるのは嫌だったんだ。そう思ってももう遅い。 「ほら決まり。いいだろ、たまには。刺激的で」  強引に押し切られたリカルドは額に手を当ててため息をついた。

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