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第二章 愛に怯える狼 6

 ライトアップされた日本庭園が見える豪華な露天風呂。この風呂は前回来た時も気に入っていたからまた入れて少し嬉しい。  空を見上げると、月明かりで闇よりも少し明るくなった空に星がいくつか瞬いている。 「あ〜…やっと解放された感じ…洗浄とか暫くやんなくて良いし…最高…」  ちゃぷ、と風呂の中のお湯を揺らして肩までゆっくりと浸かる。自分のキスマークだらけの肌を見ると、山田が舐めている場面が浮かんでくるから見たくない。  乳首だって毎回やらしく舐められて、見るように強要される。その度に俺の身体は俺じゃ制御出来なくなっていく。耳元にあいつの吐息が触れて、そのまま首元に舌が降りて…… 「あ〜っっ!! だから考えたくねぇっつーの!」  俺はその想像をまた消す為、手のひらでお湯を掬いジャブジャブと顔を洗った。  風呂から上がると山田と前セックスした和室に間隔を空けて布団が二組敷かれている。二組?と首を傾げたが、如月のかと瞬時に理解した。三十畳もあるこの部屋に一人は贅沢なので、如月と一緒の方が気が楽だ。  彼は「ちょっとした休みの様で嬉しいです」と楽しげに風呂に入っている最中。基本は山田と常に一緒なので、有休も中々取れないと前もぼやいていた。  風呂で少しのぼせた俺は、浴衣姿で布団の上に寝転んだ。浴衣が少しはだけたが直す事すら面倒くさい。  縁側のほうを見ると、見事な日本庭園。警備がしっかりと見張っているので窓は開けっぱなし。梅雨が過ぎた七月の夜はまだ涼しくて、少し入ってくる風が心地良い。  山田に変な下着を穿かされる事もなく、セックスをしないでそのまま寝れる事は久しぶりだ。縁側に顔を向けると月が綺麗に丸くなっていて、その煌々とした光の強さに見惚れている内に、俺は気持ちよく目を閉じた。  夢の中では山田に抱かれていて、夢の中でさえ逃げられないのかと思った。最初は必死に抵抗したが、いつもの様に陥落して嬌声を出す自分に嫌悪した。 「ん……」  目を開けると誰かの腕の中で抱えられていて、耳や首筋に唇が触れる感覚がする。ぴちゃ…と音がした瞬間、肌がぞわりと泡立った。  ‪──もしかして、本当に山田? 「起きました?」 「如月…お前何やって…」  如月の手が俺の顎を掴み、そのまま深く唇を這わされた。山田以外の人間とキスをするのは初めてで、俺の身体が固まった‪──。

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