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第二章 愛に怯える狼 8

 如月の「すみません」の声と共に、後ろの孔にあたる硬くて温かい何か。これが何かは知ってる。だけどこの何かは山田の物じゃない。俺が欲しいのは山田の物だ。 「い、挿れないっていっただろぉぉ…」 「こんな可愛い莉玖様を見てそのまま寝れませんよ。痛くしませんから力を抜いて下さい…」  如月の陰茎が尻周辺をぐちゅぐちゅと撫で付けていく。ぴた、とその動きが止まり孔に照準を当てられた事を悟ると、俺の口が勝手に開く。 「はひ……や、だ…いやだ…ゆうやのがいぃ…やめろぉぉ…」  挿れようとする彼の手を、手探りで必死に止める。 「……悠矢様とのセックス、嫌だったんじゃないんですか?」 「わかんねぇけど…ちんぽはゆうやのがいいぃ…もうやだ…はやくおわれよぉ…」 「悠矢様の事、好きですか?」 「だから…わかんねぇって……あ、あ〜……ッッ♡♡き、さ、らぎッ♡♡はいって…はいってりゅから…ぁぁ〜〜…♡♡」  喋っている途中でズブズブ勢いよく如月の陰茎が挿入されると勝手に顎が上がり、背中が仰け反る。むずむずとしていた快感が一つの塊となり、身体中に広がっていく。 「悠矢様の事が好きかどうか、他の男の物を挿れられたら分かりますよ。私のを挿れられて、嫌悪感があるかどうか」 「あ、あ、あ……やめろ…やめろ…ぬ、ぬけっ! あ、や、やぁ…♡♡はーっ♡♡むり、むりだから…ゆうやのいがい…あ、やだぁぁぁッッ♡きさらぎぃぃ♡♡」 「出来れば斗真って呼んで欲しいのですが…まぁ今日は初日だからしょうがないですね。あ〜…すごい…食い千切られそうです…」  如月の太くて大きな杭が俺の柔らかな部分を力強く擦る。山田とはまた違う感覚。こんな場面をもし山田に見られたら俺は山田に捨てられてしまう。  自分から離れたいと思った癖に、結局山田の身体を求めている自分に気づいてゾッとした。  ローションがぐちゅぐちゅと泡立つ音がして、その滑りで波紋の様に快楽が広がっていく。抜き挿しされる度に背中の表面が優しくなぞられる様に泡立つ気がする。  如月とこんな事をしてるのが嫌な筈なのに、俺の腰は勝手に快楽を求めて自ら動き出してしまう。 「莉玖様、腰が動いてますよ…本当にいやらしい…乳首もこんなに勃ってます」 「あ…ッ…はひぃッ♡♡あ♡あ♡あ♡あはぁッ♡」 「どうですか? 悠矢様のと比べて」 「ひぃっん♡はっ♡はっ♡ゆ、ゆうやのが…ほし…ぁぁッ♡♡」 「他の男に挿れられて悠矢様を裏切った気持ちになってるのなら、それで十分〝好き〟ですよ。莉玖様が気づいてくれて良かったです。ほら、擦られる度に悠矢様を思い出すでしょう?」  確かに陰茎が動く度に山田の事を益々思い出す。目隠しをされているから余計に感じる。俺に優しくキスをして、時に荒々しく俺を屈服させるあの姿。あいつの汗が滴り落ちてくる事も唾液が塗り付けられる事も、全て自分への快感に変化する。俺が抱かれたいのは山田。他の男に挿れられて、自分の心の奥の感情が輪郭を表してくる。 「あンッ♡はン♡わかったからッ♡♡もぉやだ…♡またイクからぁぁッッッ♡」 「ッ…悠矢様の事を訊いたら凄く締まりますね……これは我慢するのが大変だ。莉玖様、悠矢様の事好きですか? 悠矢様に会いたいですか?」 「はひぃっ♡はぁんッ♡しゅ、しゅきぃいぃゆうやがしゅきだからッ♡あ〜…ッ♡」 「捨てられて惨めになる前に離れたかったんですよね。素直に言わないのが可愛いなぁ」 「はっ♡はっ♡ゆうや…ゆうやのちんぽがいい…ぬいて…」 「ふふ。一週間でもっとやらしい雌犬になって、悠矢様を吃驚させてあげましょうね。ほら、私のも貴方のやらしい孔で奥まで咥えて下さい」  身体が引き寄せられて、グッと奥まで如月の大きな陰茎が挿入り込む。 「ああああッッ♡おくッダメッ♡きしゃらぎッッ♡おかしくなるからやめろぉぉ♡♡」 「すみません、思ったよりも莉玖様の身体が良すぎて止められません。ああ、予定が狂ってしまった…畳と布団と浴衣姿の若い男子なんて組み合わせ、あまりお目にかかれませんから」  もう如月が何を言っているかわからない程、快感の渦に飲み込まれる。パンパンと肌が打ち付け合う音。その音はどんどん速くなる。  その間も如月はローション塗れの俺の陰茎を扱き、俺は悶えるしか出来ない。 「はっ♡はっ♡でりゅッ♡おしっこでりゅッ♡きしゃらぎッ! はなしてッ!! はひ…♡あ〜〜ッはやくしちゃらめ…あっ♡あっ♡♡あ〜〜〜ッッ♡♡」  びゅるびゅるッと液体が放出される感覚。射精というより、尿が出た感覚に近い。小刻みに垂れ流れてくる生温かい液体の感触が情けなくて涙が出る。 「安心して下さい、おしっこじゃなくて潮ですから。ドライでイク為に沢山玩具を持ってきましたから、明日また挑戦しましょう」 「はぁっ…はぁっ…はぁっ…ひゃうぅぅッ♡きしゃらぎぃぃも、むりぃぃ♡♡」  如月は俺を四つん這いにして再び陰茎を挿入した。バカになってるのかと言うくらい緩んだ孔にスムーズに挿入(はい)り、その刺激が脳天まで突き抜ける。 「私も限界なんで、今日はこれで終わりましょう。はぁ…莉玖様はお尻も綺麗ですね。全て彫刻の様に美しくて、見ていて飽きません…もっと色々な姿を見たくなる…」  如月はごりゅっと奥まで杭を突き刺した。緩んだ孔が一気にまた引き締まった気がする。 「あ〜〜……ッッ♡♡お、おわって…もうおわって…あっあっきさらぎぃぃ♡♡」 「すみません、もうイキますから。最後は莉玖様のやらしい孔に注がせて下さい」 「はひぃっ♡はひっ♡♡ひぎっ♡♡あっあっあっ♡なかはだめッ♡♡ゆうやにおこられるからぁぁ…あ〜〜……♡」 「莉玖様は、困った雌犬ですね。主人以外の物を挿れられてこんなに善がってしまうんですから…ああ、ずっと貴方をこうして抱きたかったので嬉しいです。…貴方は自分が思うよりも人を惑わしているんですよ」 「はっ♡はっ♡はっ♡らめぇッ♡はやいぃぃ♡あ〜ッッ♡♡」 「悠矢様以外の男に種付けされる感覚も覚えておきましょう」 「はひっ♡はひっ♡らめっ♡あ、あ、あ〜〜ッッ♡♡らめっていったのにぃぃ……でてるぅぅ…」  如月の陰茎から液体が発射され、俺の腹の中に熱い物が広がる。  目隠しを取られようやく視界が明るくなったが、俺にはもう何も反応出来る気力は残ってなかった。  俺の身体を拭いてくれる如月の方へ何とか目線だけ向けると、にっこりといつもの笑顔で返された。こんな事をすると分かってたなら、彼の誘いになんか乗らなかったのに。最初からこいつはこれが狙いだったのだ。 「莉玖様、これから一週間、悠矢様の代わりにたっぷり可愛がってあげますからね」  ‪──この家の人間は、全員イカれてる。

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