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第三章 狼は愛を乞う 8

 セックスが出来ないからか、山田は次の日から授業中以外俺から離れなかった。朝起きてから、車での登校中、休み時間、下校、家にいて寝るまで。それが今で十日目。ずっとべったりで、流石に少しうざい。 「はぁっ…はぁっ…んぅ…あ〜ッ! クソッ! お前どんだけするんだよ!! 唇ふやけるだろーがッ!」 「うるせーな…足んねーからお前は黙って舌出せ…離したらお前はすぐどっかに行く…」 「んぐ…ッ…ッ…はっ…はっ…」  家に戻るまでの狭い車の中、山田は俺を後部座席で押し倒して唇を貪る。背中にシートが擦れたくぐもった音と唾液の交わる水音。唇から離れても、そのまま耳や首を愛撫され、また唇に戻ってくる。  如月は前を向いたまま運転をして、何も言わない。  山田の事を好きだと自覚はしているが、毎日これでは、あまりにも自分の時間が無さすぎる。 「悠矢様、今日は莉玖様と夕食は取れませんよ。社長といつもの店で夕食です」 「何であの親父は家で飯食わねーんだよ…しかもいきなり…あー腹立つ。如月! 今日はお前も来いよ!」  山田は父親に呼び出されてご立腹だ。如月は俺が一人で過ごす事を気にかけてくれたが、こうもベッタリだと、流石に一人の時間が嬉しい。だけど夕食は一人でとる気にはなれず、自室に籠っていたらいつのまにか寝ていて、部屋の扉が開く音で目を覚ました。  時計を見ると日付を跨ぐ頃。寝起きのぼんやりとした頭で、部屋に入ってくる如月を見つめた。 「起きてましたか。夕食を取ってないと聞いたので。体調大丈夫ですか?」 「平気…眠かっただけ」  上体を起こして、寝起きでぼやけた目を擦る。 「そうですか、何か軽く食べます?」  要らないと返事をすると、如月は「夕食も食べずに、何か考え事でもしてたんですか?」とベッドに腰掛けた。 「なぁ斗真、山田のアレどうしたらやめさせる事が出来ると思う? ちょっと異常だろ…」 「ああ、キスですか。しないように忠告したんですけど、聞いてくれなくて。多分セックス出来れば戻りますよ。十日もお預けなので、苛々してるんです」  苛々してるにしても、あれだけキスして余計に身体が疼かないのだろうか。一応セックスが禁止されているのは二週間なので、あと四日はこの状態が続く。そう思うと、一気に身体が重くなる。 「斗真? お前何して…」  如月が近づいて来たかと思ったら、腰の辺りに手が伸びた。ん? と思ったと同時にデニムをずるりと剥ぎ取られて、簡単に下着姿にされた。あまりの早業で何が起こったかよく分からず、俺の口はぽかんと開いている。 「一応二週間が安静期間ですが、そろそろ腫れが引いた筈なので悠矢様がチェックしろと。すみませんが、確認させて貰います」 「は…? 何…チェック?」 「挿入しても痛くないかどうかです」  如月はにっこりと笑いながら、首元のネクタイを緩めた。俺の身体はじりじりと後退り、ヘッドボードへと追い詰められる。 「挿入って…お、お前とはセックスやらねーぞ? 山田が怒るし…」 「悠矢様が怒らなければセックスしますか?」 「いや…しねーよ…何だよ斗真、まさか無理矢理するんじゃねーだろーな…嫌だぞ俺…」  いや、如月は無理矢理セックスはしない。するとしたら山田が許可を出した時くらい。まさか…と思っていたら山田が部屋に入ってきた。 「莉玖、起きてたのか。如月から聞いた?」 「な、に…何だ?」 「莉玖様は悠矢様が許可しても、私とセックスはしたくないそうです。良かったですね」  その言葉に山田はベッドに飛び乗って嬉しそうに抱きついてきた。スプリングが勢いよく弾み、バランスを崩した俺はそのまま山田に身体を預ける格好になり、簡単に背後を取られた。 「ん〜♡そっかぁ♡りーくッ♡ちゃんと断れたの偉いぞ〜♡俺以外のちんぽは嫌だって事だよな? あ〜良かった♡」  山田がいつもの様に耳や頬にチュッと沢山キスをしてくる。何だか機嫌が良いみたいだが、それが俺は怖い。まだ事態を把握出来ていない俺を、背後にいる山田は羽交い締めにし、如月が俺の下着をずりおろして脚を開かせた。何だこの連携プレーは。俺は今からこの二人に何をされるかわからなくて、声すら出ない。 「腫れは引いてますね。でも一応軟膏を塗り込んでおきますね」  如月は軟膏を押し出して指先に乗せると、俺の窄まった孔に優しく塗りつけた。 「ひ…、さわんな…」  俺がこんな事をされてるのに、山田は何も言わず、寧ろ俺の右の膝裏を持ち上げて孔がよく見えるようにしている。 「山田、斗真にこんな事させて…怒んねぇのかよ…い、いつもみたいに…」  いつもなら如月が抱きついてくるだけで怒る癖に、彼が孔に触っても、今日の山田は嬉しそうだ。 「莉玖、如月から聞いたぞ。お前沢山仕込まれてんのに俺に全然見せてねーだろ…。俺、やらしい莉玖が見たい」 「何言ってんだお前…頭おかしいのかよ…」 「おかしいくらい好きだつったろ…今日は俺と莉玖と如月で三人でやる。お前が如月に突っ込まれてんのはムカつくけど、他の男に突っ込まれてるお前にフェラさせたい」  理解が追い付かない。セックスを人に見せるだなんて、俺はアダルト男優なんかじゃない。いくらセックスをした相手だからといっても、他の相手とのセックスを見られるのは無理だ。 「お、お前、どうせ斗真と俺の見てキレるだろーが…」 「……多分な。でも見たい。お前が俺以外にどんな顔見せるのか知りたい。莉玖の事、全部知りたい」  山田の唇が、俺の首を愛撫していく。俺の喉からは簡単に甘い声が出て、そうしている間にも、如月のゴツゴツとした指が優しく孔へと入り込んでいく。もう孔の痛みはなく、寧ろ快感しかない。 「あ、あ〜……やめ…」 「莉玖様、簡単に一本入りましたよ」  如月の指がぐりぐりと内壁の中で回転する。その動きで、肌が簡単に泡立つ。 「ふーん。痛くなさそうだな。莉玖、如月のちんぽ嫌だろうけど、その後ちゃんと俺が可愛がってやるから…」  如月がゆっくりと内壁を擦る中、山田は俺のシャツのボタンを外していく。見なくてもわかる。俺の二つの尖りはもう硬くなっていると。 「十日ぶりの乳首はちゃんと感じるか? 莉玖、指舐めろ。たっぷり唾液つけろよ」 「んん…はぁっ…はっ…」  武骨な長い山田の指が口内を動くと、俺の舌が勝手に絡まる。如月の指の刺激と相俟って、山田の指は簡単に俺の唾液に塗れた。 「うーわ…ベトベト…こんなについてたら気持ち良いよなぁ?」 「ひぅっ♡…ぅ…あ♡あ♡」 「お前の唾液でぬるぬる…俺の舌で舐められてるみたいだろ? ここを舌で優しく舐められて…吸われて…」  山田の指が、いやらしく俺の胸の尖りを触る。 「あ…♡あ…♡あ…♡あはッ♡や、まだ…さわ、んな…♡♡あ〜…ッ…と、斗真…下の指増やしてんじゃ、ねぇ…クソ…あぅ…♡や、やんねぇぞ…俺は見せもんじゃねぇ…」 「そうですか? 莉玖様の此処は見られたがってますよ。窄まった周りがひくひくしてます。ほら、此処ですよ」 「ひゃぅっ♡斗真! さ、わんな…あ、もうやめろ…山田も…やりてぇなら普通に…」  山田は俺の乳首をこりこりと触りながら如月の指の動きをじっくりと観察している。「締まってる?」「はい。やはり乳首を摘むと変わりますね」側から見ていると二人は俺の身体で実験でもしているみたいで、結局山田は何だかんだで如月と気が合うらしい。実験される俺は溜まったもんじゃない。  だけど段々と、俺もこの二人に見られている事が快感になっている気がする。  こいつらはイかれてるけど、俺も何だかそれに毒されてきた。俺を気持ち良くするこの二人に同時に攻められたら…そんな事を考えて、身体の奥が疼いてくる。 「ひぅ…もぉやだおまえら…あぁぁッ♡♡二人でちくびちゅぱちゅぱすんなぁぁ…あっ♡ンンッ♡」  じゅるるる…♡ちゅぱちゅぱ♡ぺろぺろ♡♡ぺろぺろぺろ…♡れろれろれろ…♡♡  山田は俺の右腕と脇の間から顔を出して右の乳首を吸い始めた。如月は左の乳首を優しく舐めながら、孔の中にみっちりと挿入った二本の指をずちゅずちゅと掻き回している。 「あぅぅ…♡♡ふたりいっしょだめぇぇ♡♡孔の中、指うごかすなよぉぉ…んぁぁ♡♡」 「莉玖様。私達が居ない間、アナニーしてたでしょう。十日ぶりにしては、孔が柔らかいんじゃないですか?」  その言葉に何も答えないまま、与えられる快楽に身を任せた。この質問には沈黙が正解。俺は何も答えないぞ。そんな俺に、如月は容赦なく気持ちの良い場所を擦る。 「あっ♡あっ♡斗真♡♡そこいやだって…あ〜…♡♡」 「アナニーも前立腺を攻めました? すっかり此処、気持ち良さそうですね」 「莉玖アナニーしてたの? 俺に内緒でそんなやらしい事してたのかよ…ほら、答えろ。正直に言ったら、3Pやめて普通にセックスしてやる」  その言葉に、俺の喉がゴクリと鳴る。本来なら普通にセックスが良いが、俺の身体がこいつらの所為で、いつもよりも数倍火が灯る様に熱くなっている。たった十日セックスをしないだけで、こんな風になるなんて。  答え方次第では山田と優しい普通のセックスになる。だけど今の俺は……。 「莉玖、答えろ。やらしいケツまんこに自分の指挿れたのか?」 「挿れてましたよね? こんなに簡単に指を咥えこむんですから」  いつのまにか全ての衣服を剥ぎ取られ、乳首と孔にローションが塗られていた。ぬるぬるとした感触が更に俺の意識を快楽へと堕としていく。二人の手の動きは、俺の気持ち良い所しか触らない。 「ひぐ…♡ひぃぃぃ♡♡」 「身体ビクビク跳ねさせてそんな如月の指気持ち良いか? あーあ…もう我慢汁タラタラ…」 「莉玖様は此処が好きなんですよね。此処も好きだったかな……」  如月の指が、腹側の内壁を何度も擦る。絶妙な動かし方に、陰嚢の奥から熱いものが込み上げる。 「ぁぁあぁぁあ♡♡そこ…ッ♡すき…♡♡きもちい…♡」 「莉玖〜。如月ばっかりだと俺拗ねるぞ。乳首こうされんの好きだろ」  山田の舌尖りが優しく胸の尖りに触れ、やらしく絡む。 「ひゃんッ♡♡ん、ん、♡すきぃぃ…」 「だろ…? ん…美味しい…」  ちゅうう…♡ちゅっ♡れろ…れろれろれろ…♡ 「はぁぁ♡♡きもちぃ…♡♡ん…んんっ♡」 「で? アナニーした? 言わねーと俺も如月もやめるぞ」 「はーっ♡はーっ♡アナニー…した…したからぁぁ…♡♡セックス…したぃぃ…♡♡あっ♡あっ♡だからゆうやのちんぽがほしいぃぃ…♡♡」 「莉玖様、私のは要らないんですか?」  如月の言葉に、思わず山田の方を見る。山田はムッとしてる顔だったので、如月に言葉を返さずに黙る。今の俺の身体は、如月のも欲しがっている。あの別荘で受けた快楽を、身体が思い出してしまった。 「莉玖、如月とは出来ないか? 本当に嫌だったらやらねぇけど…」 「や、る…」 「……だよなぁ…あんなにくっついてたんだから、本当は嫌じゃねぇよな…今日は特別だからな…明日からは絶対他の奴に触らせねぇ」  山田の方へ顔を向かされて、激しく舌を絡められた。唇が離れると、山田はそのまま俺を優しく仰向けにした。 「悠矢様、顔が怒ってますよ。他の男に抱かせるの嫌な癖に、本当に大丈夫ですか」 「お前が言ったんだろーが。まだまだ仕込んでるの知らないのかって。腹立つけど、今日だけだからな。莉玖に仕込んだ事全部教えろ」 「悠矢様が良いなら遠慮なく。ラッキーだなぁ」 「お前はゴム着けろよ。中出し禁止」 「悠矢様って……やっぱりちょっとバカですよね」 「何か言ったか? つーか絶対お前より気持ち良くさせるからな。出し惜しみすんなよ」 「そういう所がズレてるんですよね…まぁ、私は役得なので構いませんが」 「りーく…久々のセックス気持ち良くしてやるからな」  ベッドに仰向けの俺を、笑顔で覗き込む山田と如月の顔。  ああ、やっぱりこの家の人間はイカれてる‪──……そう思った俺の口元も微かに上がっていて、結局俺は淫乱な雌犬なのだと、諦めて二人からの愛撫に身を委ねた。

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