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第四章 狼は愛に溺れる 2

 山田に殴られた日、初めて男の陰茎が自分の尻の孔に挿入された。痛くて痛くて、孔が裂けているのかと思った。  自分より強い力で押さえつけられ、自分の中を掻き回される恐怖。抵抗すれば殴られ、また中を強く擦られる。  俺の身体に興奮して自制が出来ない強い雄。俺は嫌がりながらも、その反面、彼の力強さにゾクゾクとしたのを覚えている。  気づくと俺は痛みすら気持ち良さへのスパイスとなり、彼の腰の動きが止まると「もっと犯してくれ」と懇願していた。  次の日から毎日抱かれる様になったが、彼が俺の名前を呼んで腰を振る度、俺は興奮していた。俺より強い雄が俺の身体に夢中でしがみつく。その光景がもう一度見たくて、俺はこうして今も抱かれている。  そしていつしか、俺は山田が居ないとダメになってしまった。  ‪──俺はあの日から、ずっと山田に心を囚われている。彼が欲しくて、堪らない。 「ほら莉玖。お前が他の男のちんぽ挿れられてる姿、見といてやる」  ようやくアナルビーズが引き抜かれ、如月に布団の上で仰向けにされた。脚を広げている俺の頭側に山田が腰を下ろし、彼の分厚い武骨な手のひらが俺の手首を掴む。「お前が逃げない様に抑えててやる」と、俺を見下ろす山田の顔は薄い笑みを浮かべている。山田のが先に欲しいと懇願すると、俺のは後のお楽しみだと優しく唇が触れた。 「本当に私が先で良いんですか?」 「お前が先に挿れてる方がムカつくから、その後俺が挿れた方がより燃えるだろ。つーかお前、服脱がねーの?」  如月はシャツをはだけさせて、ベルトを外すくらいで完全には脱いでいない。 「脱いでも良いですが、スーツ姿のままで抱くと、莉玖様を無理矢理犯しているみたいで唆るんですよ」 「……趣味悪りぃ」 「悠矢様よりマシです」  如月の手のひらが俺の太腿の裏を撫で回し、俺の窄まりに亀頭をぐちゅ、と照準を合わせた。焦らす様に孔の浅い所で抜き差しされ、もうすぐ其れを挿入される期待感で、身体がまた悦びでゾクゾクと震える。 「莉玖様、気持ちの良い顔を沢山見て貰いましょうね」  ズブズブと如月の大きな陰茎が、杭の様に身体に埋め込まれる。あぁッと一際大きな嬌声を上げて、俺の背中が勝手に仰け反った。 「あ〜……♡♡……ッ…はいった…ぁぁ♡♡」 「熱い……悠矢様に見られてるからか余計に締まる…」 「あっ♡…ッ♡はぁ…♡とう、ま……♡」  如月の名前を読んだ瞬間、山田の手の力が強くなる。山田が、見ている。他の男の陰茎を挿入されている俺を。その事実が俺の身体を更に敏感にさせた。 「あっ♡はぁっ♡はぁっ♡ひ、ぅぅッ♡♡そんな…かきまわし…ぁぁあぁあ♡♡」 「こうやって奥をグリグリと突かれるのが気持ち良いんですよね」 「はーっ♡はーっ♡すきぃぃ…♡んぁぁッ♡」 「ふふ…悠矢様が抑えてるから、莉玖様にしがみついて貰えなくて寂しいです。でも可愛い乳首を触ってあげれますね」  ギュッと強い刺激を乳首に与えられ、身体がびくっと反応する。 「ンンッ♡と、ま…♡♡と、うま…♡あッ…い、たい…ゆ、ぅや…」  如月に反応した俺に、山田の手首を掴む力が益々強くなる。目線を彼に移すと、背筋が凍る程冷たい目をした彼が、喘いでいる俺を上から見下ろしている。  その間も如月は容赦無く俺の奥を突き続け、俺はまた甘ったるい嬌声を上げた。 「あ…ッ♡はぁっ♡はぁっ♡はぐぅッ…♡はや、い…と、ま…♡♡」  静かな部屋には俺の喘ぎ声とぱちゅぱちゅとした結合音。別荘で何度も挿入された如月の其れは、相変わらず大きく、俺の内壁にみっちりと埋まっている。リズミカルに浅い所を突いた後、グッと奥に押し込まれる瞬間が堪らなくて、喘ぐ声が大きくなる。 「はーっ♡はーっ♡ぁぁあぁあッ♡」 「……如月、後ろからに変えろ。俺の舐めさせるから」  如月にあっという間に四つん這いにされ、山田の猛々しい陰茎が視界に入る。俺の顔は勝手に近づいて、ぺろぺろと彼の熱い其れを舐めとった。男のこんな物を自分が舐めるなんて想像した事すらなかった。だけど今、俺は自ら此れが欲しくて舐めている。  後ろからも突っ込まれ、善がり、涎をだらしなく垂らしながら必死に舐める自分。情けなくて、恥ずかしい。だけど俺を撫でる山田の手が優しいから、その感触が欲しくて一生懸命舐めた。 「莉玖様、フェラ上手になったでしょう?」 「……お前仕込みなのがムカつく。…ッ…あ〜コラ莉玖…気持ち良すぎだって…あ…ッ…」 「莉玖様の知らない顔を見たいと言ったのは悠矢様ですよ。ほら、こういう所を突かれた顔、見た事ないでしょう?」 「んぁっ♡♡ぁあぁあああッッ♡♡」  如月の浅い部分から一気に奥に突かれた刺激で、びゅるびゅると陰茎から白濁の液を発射する。シーツの上に汗塗れの身体を沈めようとすると、如月にぐいっと後ろへ引っ張られた。 「はーっ♡はーっ♡とうま…」 「悠矢様、もっと見てあげて下さいよ。莉玖様の気持ち良い顔」 「あっ♡んぁっ♡んぁぅ♡や、やぁッ♡♡きもち…きもちぃぃッ♡♡あ…んぁッ♡あ、あ、とうま、…ん…んぅぅ…んぐ…ンンン…♡♡」 「っはぁ…ダメですよ唇を離しちゃ。この間みたいに腕を回して…」  如月が俺の腕を自分の首の後ろへと回し、強制的に如月の顔が近づいて唇を貪られた。背面座位にさせられた俺は脚を開かされ、きっと結合部分は山田に丸見えだろう。だけど今は、山田の顔を見る余裕がない。でも、分かる。きっと他の男の物を挿れて醜態を晒している俺を、彼は冷たい目で見つめている筈。そう思うと身体がゾクゾクとして、自分の陰茎がより熱を孕むのがわかる。 「莉玖、如月のちんぽ気持ち良いか?」  山田が俺の前に立ち、乳首をべろりと舐め上げた。 「あぅっ♡あ…ゆぅ、や…♡あっは…♡あ…♡♡あ♡きもち、い…あ…♡」 「俺以外に抱かれるの嫌つった割には気持ち良さそうだよなぁ…ふーん…俺以外とやる時、ンな顔してんだ、お前」  その声を聞いた瞬間、背筋が凍る様に冷たくなった。身体の表面は火照っているのに、芯から冷たくなっていく。  初めて山田に殴られた時と一緒。俺を見据える彼の目は、いつもより冷たく、そして、燃えている。  俺を見つめるお前の目が怖いのに、早くお前に滅茶苦茶に抱かれたい。  俺を本当に満足させてくれるのは、お前の身体だけなんだ。  

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