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第五章 愛を忘れた狼 7
目を覚ますと、俺の腕の中でもぞもぞと動く物体。寝る前まで酷かった雨の音は小さくなっていて、雷も過ぎ去った様だ。視線を目の前の物体に遣ると、莉玖が上体を起こしてベッドから出ようとしている。
「莉玖、どこ行くんだ? トイレ?」
彼の身体を抱き寄せて、俺から離れようとするのを防止する。やっぱり隣で寝るのが嫌になったんだろうか。さっきのキス、やりすぎたかな。
そんな反省をしている俺に、莉玖は少しもじもじとしている。おしっこか? と訊くと、莉玖は首を横に振った。
「なんか…やまだにぎゅーされるとちんちんおかしいから、トイレ…」
(……ん? ちん、…?)
「え…莉玖、今のもう一回言って…」
「だから、なんかおれのちんちんおかしい…ムズムズする…」
〝ちんちんがムズムズする〟
へー、子供の頃の莉玖はちんぽじゃなくて、ちんちんって呼ぶ派なのかー、なんてどうでもいい事が頭を過ぎる。いやいや、そうじゃない。ムズムズってそれって…。
俺は莉玖の身体を更に自分に引き寄せて、彼の股間を触った。
「やまだ…? ちんちんさわらないで…」
「莉玖、ここがムズムズすんの初めて? 如月といる時は?」
「しない。今日がはじめて。あ…なにする…」
莉玖の下着の中を触ると、陰茎が硬くなり始めた。身体は十六歳だが、精神が六歳なので脳が無精すら抑えていたのだろうか。
勃起する事すら知らない莉玖。そんな無垢な子供にこんな事をしていいのだろうか。
しかし、久々の莉玖の感触に俺の手は止まらない。
(いや、こんなの止まれって方が難しいって言うか…身体は十六歳だし…うわ…莉玖の完全に勃ったな…)
「莉玖、ムズムズすんの嫌か?」
「んーいやじゃないけど、なんか落ち着かないしおしっこしてくる…」
「じゃあ俺がムズムズ止めてやる。下、脱がしていいか?」
「え?」と莉玖の返事を待たずして、ベッドカバーをめくり上げ、彼の下着ごとずり下ろした。
黒々とした繁みから、ぶるんっと勢いよく十六歳の立派に勃起した陰茎が飛び出てきた。
「えー…ちんちんおかしい…何これ気持ち悪い…」
莉玖は自分の股間を見て、嫌そうな顔をした。自分でおそるおそる触っているのが可愛い。
(本当に何も知らねーんだな。だったら、教えなきゃダメだよな…)
「あんまりここ見ないのか?」
「なんか毛がモジャモジャだし、いつも見てたのとちがうから、あんまり見たくない…」
「大人は皆こうやってムズムズするんだよ。でも莉玖はやり方知らないから教えてやるよ…」
「やり方…?」
莉玖の横に寝転び、反り勃った先端を指先で優しく撫でると、莉玖の身体がびくっと動く。
「気持ち良いか?」と耳元で囁くと「わかんない…もっとムズムズする」と少しずつ息が上がる莉玖。指で輪っかを作り、上下に扱いてやると俺の手を止めようと、彼が遮ってきた。
「やまだ…さわるのやめて…」
「莉玖、気持ち良くない? ほら、こうされるとおしっこ出したくなるだろ?」
話してる間も上下に扱いて、先端をクリクリと触ってやると、彼の身体がびくっと揺れた。記憶を失くしても相変わらず感じやすくて、愛おしい。
「はぁっ…はぁっ…でも、おしっこ出たらダメだから、トイレ…」
「こうやってちんぽ硬い時は、おしっこじゃなくて白いみるくが出るんだよ。男はそれ出さないとこのムズムズ治まんねーの…」
上下に扱く動きを更に速めると、莉玖の手が俺の腕を更に強く掴む。枕の上で頭を動かして気持ち良さに耐える莉玖。可愛くて、また唇をちゅうっと吸ってやった。
「はぁっ…はぁっ…また、くちたべた…」
「口食べられた方がもっと気持ちいいから…さっきやっただろ? 舌だして…」
莉玖は素直に舌を出し、俺の動きに合わして舌を動かす。ぴちゃぴちゃ、ちゅくちゅくとした音に、正直自分が興奮してきた。
「んー…んぅ…やまだ…おしっこでるから…う…ぁ…」
「っはぁ…おしっこ出すとこ見たいからだして…莉玖の事好きだから、漏らしても嫌いになんない…唇も食べたい…」
「あ…んん…はぁ…はぁ…あ〜おしっこぉぉ…」
莉玖のイキそうな雰囲気を読み取り、手の動きを速める。何度も扱くとびゅるっと勢いよく白い液体が飛び散った。
「はぁっ…はぁっ…だしちゃった…」
「うわ…すげぇねっとりしてる…」
いつもより粘度が凄くて、記憶を失くした以来本当に初めてだったのかと再確認した。
俺の手のひらと指先から滴り落ちる精液。はぁはぁと荒い息でぼんやりとした目の莉玖の耳元に唇を落とすと、彼の身体が揺れた。
「な? おしっこじゃなくて白いだろ? これがおちんぽみるく」
「おちんぽみるく…」
「ブフッ!」
噛み締める様に呟く莉玖に、耐えられず吹き出してしまった。俺もアダルト動画で覚えた言葉だから、真面目に返されると笑ってしまう。
「莉玖、これは如月には言っちゃダメだぞ。俺と莉玖の二人の秘密。お前の口食べた事も、莉玖のおちんぽみるくを俺が出した事も。わかった?」
「うん…二人の、ひみつ…」
莉玖はもう目が眠そうで、うとうととしている。初めての射精の快楽は相当疲れた様だ。
「もう寝よ。身体は拭いといてやるから…」
「ん…おやすみ、やまだ…」
おやすみ、と頬にキスをしてから彼を寝かせ、洗面台に手を洗いにベッドから出る。
(あ〜やっちまった…でも男の生理現象だしな…しょうがねぇ、よな…出し方わかんねぇんだから。つーか俺も勃ってるし…ダメだな俺…全然我慢出来てねーじゃん)
自分の今の行いを反省して大きな溜息をついた。だけど反省中も莉玖の感じている姿や声を思い出してしまって余計自己嫌悪になるだけ。
(とりあえず手ェ洗って…莉玖の身体拭いてやんねーと…)
蛇口を捻り出す前に、自分の手のひらを見つめる。莉玖の出した精液がべったりとついた手。ぺろ…と舐めると莉玖の味がする。
十六歳の身体で、精神が六歳の彼が初めて達した精液の味。
お前を俺から離れない身体にしたつもりが、離れられない身体にされていたのは、実は俺の方なのかもしれない。
こんな体液ですら、俺は欲しくて堪らない。
鏡に映った莉玖の精液を舐める俺は、なんて滑稽なんだろう。
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