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第六章 狼達は愛に塗れる 7
毎日飽きもせずにするセックスは、段々と性欲から愛情の確認となり、その内お互いが離れない為の意思表示となった。いや、寧ろ全てが綯交ぜになっているのかもしれない。
「まるで狼のつがいの様ですね」
山田に首を軽く噛まれると、痛いよりも嬉しい、という気持ちが勝つ。いつもの柔らかな舌の感触とは違って、歯の強さが、自分は彼の所有物なのだと実感させてくれる。
「狼って一匹狼なんじゃねーの?」
如月は一人掛けのソファで難しそうな本を読みながら、山田の問い掛けに薄く笑っている。
「狼は、つがいを見つけると一生涯連れ添い、愛情を与え続けるんですよ。甘噛みしたり毛繕いをしたり」
「へー。まるで俺みたい…如月、狼に例えるの好きだな〜。昔も言ってただろ、二匹の狼の話」
180センチ近い背丈の俺達の脚を伸ばしても、まだ余裕のあるソファ。その上で寝転んでテレビを見ている俺の上に覆い被さっている山田。リビングにいると、大体この体勢だ。
学校から帰宅して早々、酒井さんから話しかけられて、一緒にお茶をしているといつのまにかリビングでダラけてしまった。
「ああ、チェロキー族の話ですね。アメリカインディアンの言葉が好きなんですよ」
「そう、それ。懐かしいな〜。莉玖はきっと、悪い狼にずっと餌あげてた方だな」
彼等の話についていけず、テレビ画面へと視線を映すと山田がまた背後から頸をべろりと舐めた。
「……ッ…ンなとこで舐めんなボケ」
キッチンとリビングは離れているとはいえ、酒井さんにもし見られたら流石に恥ずかしい。因みに松下さんに見られるのも未だに照れる。
「ここじゃなかったらいいのか? よしっ、部屋行くぞ!」
「はぁっ? おいっ! 勝手に担ぐな!」
山田はひょいっと軽く俺を持ち上げて、すぐに彼のベッドまで連れていった。ドサッと倒されると、質の良いスプリングが弾む。
「お前…さっき学校でヤッたばっかりだろ」
そんな事を言いつつ、俺の乾いた喉は唾が滑り落ちる。今から彼に抱かれる事を考えれば、自分の身体はすぐに受け入れる準備をするかの様に、敏感になっていく。
「何回やっても足りねーの。いつまた俺の事忘れるかわかんねぇし…お前の身体に憶えこませたい」
俺の背中がベッドへと沈み、彼の大きな背中へと手が廻る。彼の唇が触れると、自動的に俺の舌が彼の舌を求めて外へ出る。その舌先を優しく舐め取られると、これから彼と身体を繋げる期待感が身体中を駆け巡っていく。
「俺ずっとお前の事、狼だと思ってた…」
「何だそりゃ…ンン…♡♡どこ舐めてんだ…」
山田は俺の唇だけではなく、頬や額にも舌をべろりと這わす。それはまるで動物の毛繕いの様で、〝自分は愛されている〟という承認欲求らしきものが満たされていく。
「でも六歳のお前にも狼だって言われたし、俺もそうだったんだなって感じ…二匹の狼にどちらに餌をやるか…」
「二匹の狼?」
さっきの如月ともしていた話。そんなに印象的な話なのだろうか。
「ま、その話はまた今度。今はお前の事食べるのが先。美味しく食べてやるからな」
制服のネクタイを緩めた山田にまた覆い被さられ、今度は激しく唇を貪られた。
「ん…ンン♡…っはぁ…やま…んぅ♡」
「莉玖はすぐ乳首勃つ…まだキスだけだろ?」
「るっせぇ…あ…♡」
半袖シャツの上から、簡単に硬くなった自分の胸の尖りをカリカリとされ、身体の奥が疼く。こんな所、最初はそんなに感じなかったのに山田の指や舌でやらしく触られる度に敏感に反応する。
シャツ越しに彼のじんわりと温かな舌の感触。彼の唾液で簡単にシャツが透けて、俺の敏感な尖りが色を持ってくっきりと浮き上がった。
「シャツごと舐めんなって…も、直接、舐めろや…」
「すぐ舐めてやんねーよ。お前の記憶の無い間、どんだけお預け食らったと思ってんだよ」
「お前…その分散々ヤッただろーが…ひ…ぅ♡あ…♡」
いつもの水音が響くと、もはや見なくてもどう舐められているのかわかってしまう。
ちら、と視線を遣ると舐めている彼と目が合う。ニヤリと笑って更にシャツ越しにちゅうっと吸われ、羞恥心が増す。
でもお前が俺の身体に夢中になっている姿が堪らなく好き。自分の身体を愛撫され、荒々しく熱い杭を捻じ込まれ、夢中になって俺に腰を打ちつけるお前を想像すると、身体の奥からゾクゾクとするんだ。
「学校だとシャツ濡らすの無理だもんな。ほら、莉玖。新しいローション気持ち良いな〜? 」
シャツの上からとろりとした粘液を塗りつけられ、布の質感と指の刺激で俺の身体はすぐに跳ねた。山田は行為の度にシリコンオイルの色んなローションを使っていたが、今日は初めて届いたオーガニック系のローションを早速試したかったんだろう。
俺も山田もローションに種類があるなんて事、如月に教えてもらうまで知らなかった。水溶性もシリコンオイルも、俺的には何でもいいが、山田は俺の身体に負担にならないものがいいらしい。
自分が記憶を失くしてる間に何があったかは知らないが、最近の山田の俺に対する扱いは前よりも数倍優しい。
「あ〜…♡あ…♡ンン〜〜♡」
ボタンを外そうと彼の指が俺のシャツを引っ張る。だがローションでぬるつく為かうまく外れない。
「莉玖、替えの制服は用意させるからごめんな…」
ビリッと音がして、ボタンが弾け飛ぶ。俺の肌に、彼の手のひらがゆっくりと尖へ向けて上がってくる。ぬるついた感触で優しく尖りを撫でられ、俺のスイッチが入り始める。
「ひゃ…♡」
「このローションなら、化学成分入ってないから全身たっぷり使えるな。うっわ乳首ぬるぬる…」
「は…♡ンン…ッ…うぅ…」
「下はどうかな…」
「ひ…♡ひン…♡」
ベルトはいつのまにか外され、下は下着ごと取られた。俺は濡れたシャツと靴下だけにさせられ、山田に四つん這いにされた。
彼の厚い掌が俺の尻を掴んで揉みしだく。そして指先が孔の縁をゆっくりとなぞっていく。それだけで自分の孔がキュンと反応する。
「ヒクヒクしてる。可愛い♡そういや最近舐めてなかったもんな〜♡ん〜♡」
温かく湿った物が俺の孔の縁をぐるりと触れた後、れろれろと孔の中心を舐めていく。
「あっ♡やっ♡やぁぁっ♡やまだッ♡おしり…あぁぁぁあっ♡♡シャワー浴びてない…ッ♡」
「別にクソしててもウォシュレットで綺麗だって」
じゅるじゅるじゅる…♡♡ちゅぱっ♡ちゅぱっ♡れろれろれろ…♡♡
「あひっ♡♡はぁン♡♡んぁぁっ♡♡」
「孔舐められるの気持ちいいだろ…」
ぐちゅり、と舌尖りが孔の中に侵入してそのままチロチロと動き回る。温かくてぬめぬめとしたその質感と、山田の吐息が孔に直接あたって、頭がおかしくなりそうだ。
「あ…♡あ…♡んんぅぅ…♡♡あ〜…♡♡」
山田はそのまま尻や腰、背中をべろりと舐めあげて、孔の中へは中指を挿入してぐちゅぐちゅと前後に動かしていく。
後ろから俺に覆い被さる様に首や耳を愛撫すると同時に指は孔を刺激していて、その気持ち良さに毎回蕩けてしまう。
こいつといい、如月といいその加減が絶妙で素直に凄いと感心さえする。
「ンンッ♡♡はぁっ♡はぁっ♡♡あ〜掻き回すのだめだって…♡」
「そういやお前がアナニーしてるのまだ見た事ねぇな…」
「アホか…見せる訳ねーだろ…あ…♡♡」
「如月に教え込まれたんだろ? 見せてくれよ、俺が居ない時にしてる事…な、莉玖…俺の事考えてアナニーして…」
低い声で鼓膜を揺さぶられ、ちゅ…ちゅ…としたリップ音の後に舌を耳の孔に捻じ込まれ、一瞬意識が飛びそうな程の快感が俺を襲う。擽ったくて気持ち良くて快感が強すぎておかしくなりそうだ。
「やぁぁっ♡♡ゆ、や…♡へんに、へんになるから、ッ♡♡耳のあなッ…ンンッ」
「ピアス邪魔だから、ここしかじっくり味わえないだろ。ん…ここ好きか? お前すぐに身体揺れるよな」
狭い外耳道を彼の柔らかな舌がぐちゅりぐちゅりと蹂躙する。その水音と彼の荒い息が至近距離で鼓膜に響き、股間の海綿体に伝わっていく。左も右も隈なく舌を捻じ込まれ、俺の上半身は簡単にベッドへと沈む。尻は必然的に突き出す格好になり、後孔を掻き回す指が更に激しくなった。
「んんぁ♡やっ♡もっ…そのなめ方やめろぉ♡」
「やめてほしいなら早くアナニーするって言え」
「あ…♡する…♡するから…♡んあぁぁあッまた、耳…なめ…♡んんっ♡はぁっ♡はぁっ♡ゆうや…」
「何で耳だけでそんなになっちゃうんだよ…可愛いすぎるだろ…」
四つん這いのまま山田にローションを陰茎と孔に塗りたくられた。だけど顔を見たいという山田に、強制的に前向きで脚を広げる格好にさせられる。
彼に視線を遣ると、その手にはスマートフォンが握られている。
「てめぇ…また、撮る気かよ…」
「もう一番最初の動画は全部消したから、新しいの欲しい。向こうでのオカズにするから。ほら、早く指挿れろ」
山田の言葉に若干引っかかるが、俺の孔は早く指を受け入れたくてしょうがない。
指を一本ツプリと挿入する。本当は自分より人に挿れられた方が気持ち良いのだが、今日の山田は俺がアナニーしないと挿れてくれない。
自分のぬるついた内壁をゆっくりと掻き回して、押し広げる。山田に良く見える様に、いつもより激しく動かした。だけど俺の身体は、その激しさに簡単に呼応して、すぐに自分で気持ち良くなってしまった。
「あ〜♡んっんっ♡はぁっ♡はぁっ♡ん〜〜……」
「……莉玖気持ち良い?」
「きもち、いいけど…たり、ない…♡ゆび、ふやす…♡」
ぐぷぷ…とローションと指が新たに孔に侵入して、刺激が倍になり、自分が撮られてる事なんかどうでも良くなってくる。
「ンンッ♡…あ、あ、あ…♡♡きもちいい…♡♡」
「莉玖、今何考えてんの。教えて…」
「……お前以外に挿れられてる事…お前の事なんか…考えて、やんねぇ…あ…♡あ〜…♡」
「……何?」
目の前の山田は撮影をやめて、アナニーする俺の腕を止めてきた。
「俺以外の事考えてるって何だよ。如月の事か?」
「は…悔しかったらお前の事考える様にさせてみろ……」
「何でンな事言うんだよ…俺がそれ言われるの死ぬ程ムカつくの知ってんだろ」
俺の指は強制的に引き抜かれ、山田の指が急に三本挿入る。ぐちゅぐちゅと掻き回す、俺の気持ち良いところを熟知した彼の指。動きまわる程、快感が広がっていく。
「あぅ♡あぅぅ♡♡あっあっあっ♡♡」
ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡くちゅ…くちゅくちゅ…♡
「俺の事考えてる?」
「はぁっ…♡♡ちんぽ…♡♡はやく…♡んぁぁっ♡はーっ♡ゆびでイキたく、ない…♡ゆぅやのちんぽでイクから、はやく…♡」
「ダメだ…俺の事考えてるって言わない奴はお仕置き。あー如月に尿道ブジー借りとけば良かった…」
「あ〜っ♡♡そんな掻き回すなぁぁ♡」
山田の指が孔の腹側の一部分を擦ると熱くなって、思わず顎をあげるほど仰け反る。気持ち良すぎて思わずイキそうになる。前立腺を抑えられたら、ひとたまりもない。
「あ〜…そこやめろよぉぉ…♡♡すぐイっちゃうからダメだってぇぇ…♡」
リズミカルにぐっぐっと刺激されると、尿が出そうな感覚が込み上げてくる。山田は、陰茎を同時に扱いて、俺の快感を増幅させた。
「あひっ♡んぁっ♡やめろ…♡あっあっあ〜♡」
「そんなに感じてるともっとやりたくなるだろ…」
ぐいっと指が曲げられて、大きな刺激で俺の亀頭から白いものが一気に溢れた。
「はぁぁぁッ♡♡ッ♡♡はーっ♡はーっ♡」
「あれ? なんかちんぽから白いの出たけどどうした? 指でイキたくないんじゃねーの?」
「ひぐっ…お前が挿れてくんないからだろぉぉ…イっちゃった…我慢してたのに…」
「な、泣いてもダメだからな? あ〜もう…ほら、これケツまんこの奥まで挿れて欲しかったらいつもみたいに可愛くお願いしろ。素直に言わねぇからだぞ…」
孔の手前で、山田の先端だけがぬぽぬぽと抜き差しされ、そのもどかしさに孔が余計ひくつく。早く奥まで挿れ込んで欲しい。
「ちんぽ奥まで挿れて…突いてくらはい…♡♡」
「……奥までって、ここ?」
ずちゅっとまた少しだけ挿れられて、それ以上は挿れてくれない。
「なんで…もっと…おく…♡♡」
「お前のケツまんこキツイからこれ以上無理。あー奥まで挿れたいのにな〜」
「こうした、ら…おくまで…」
自分から山田にしがみつくと、彼は対面座位の体勢にして俺が上になる様に抱き抱えた。
自分の重みで彼の陰茎はズブズブと奥まで|挿入《はい》り込み、その気持ち良さで身悶えた。
「あ〜はいったぁぁ♡ゆうやのちんぽ、おく、まで…♡♡はぁぁ♡」
「あーあ、まだゴム着けてなかったのにやらしいまんこに|挿入《はい》っちゃった…」
「ぅぅう♡ゴム、いらな…あ〜…♡♡そこっ♡♡」
ゴムは嫌いだ。あの数ミリの隔たりさえ、俺には邪魔。自分の身体は、直接彼を感じたいって全身で言っている。腰が、勝手に彼を求めて淫らに動く。
「……ッ…そんなにちんぽ欲しかった? …あ〜…莉玖激しい…」
「たりな、い♡♡おれのぐちゅぐちゅのケツまんこはゆうやのちんぽいっぱいほし…♡」
「〜〜ッ…クソ…結局俺の方がお前の事好きなんだよ…こっちが毎回我慢出来ねぇ…」
「ん…んぅ…ゆ、や♡♡すき…♡♡いっぱいついて、ほし…♡」
「……なぁ、莉玖はずっと俺の側にいてくれるか?」
「あ…♡あっ♡それ、きもちぃ♡♡」
山田の声は小さくてよく聞こえない。淫楽に塗れた俺は、暫くして後ろだけでイッてしまった。
「はぁっ♡はぁっ♡も、むり…♡」
「後ろだけでイッた後はずっと気持ち良いんだっけ…莉玖、お前一人だけ狡いぞ。俺の事も気持ち良くして」
「あ…あ〜♡らめ…♡♡あ〜……♡♡それ、すき…♡♡」
「ん…俺もこれ好き。気持ちいい…」
彼はバックから突くと、尻を撫で回し、双丘を割り開いて奥まで陰茎を埋め込んだ。
激しさの中に、時折奥にズブズブと挿入されるのが堪らない。彼の全てを離したくなくて、孔がギュッと締まる感覚がする。
「…本当やらしいケツまんこ…俺が離れたら、絶対我慢できねぇだろ」
「んぁっ♡はっ♡ゆうやのおっきくてきもち…♡またイク…ッ♡ンンッ♡♡」
「だから俺以外でイケない様にすんの…俺が離れたら生きてけないくらい…莉玖…ほら…これは俺のちんぽ専用のまんこだからな。俺しか欲しくないって言って」
「あっあっあっあっ♡♡はひぃっ♡♡ゆうやせんようの、ま、んッこ♡♡んぁあぁぁっ♡♡ちんぽおくまではいってりゅ…♡♡ゆうやのちんぽしか欲しくな…あひっ♡ごりゅごりゅするッ♡」
「そんな事言って如月に迫られたらどうせまたヤるんだろ…ムカつく…乳首いじめてやる……」
ぴん、と彼の武骨な指が絶妙な加減で胸の尖りを弾く。続けて、ローションでぬるついた尖りを指先のくにくにとした優しい感触が襲う。まるでアダルト女優の様に、俺は感じてしまう。
「ひうぅっ♡♡あ…♡さ、わって…もっと…♡♡ちくびいっぱいさわって…♡♡」
「莉玖…もっと声出せ…俺で気持ち良くなってる声聞きたい…」
「あ〜♡♡ゆうやぁ…♡♡んぅんん…♡♡ん…あっ♡それっ♡らめっ♡らめぇぇ…♡」
「ん〜ここか…っあ〜…すげー締まる…最高…」
側位で激しく突かれながら、乳首を優しく撫でられ、耳を舐めたりキスをされて俺は後半あまりの快楽に、途中意識がトんでしまった。脳天をまるで槍で貫かれた様な快楽は、最高だった。
「はーっ♡はーっ♡も、らめ…♡」
「ふは…涎ダラダラ…舐めちゃお」
「ん…んぅ…」
「りーく…折角綺麗にしてるのに舌絡めたら意味ねぇだろ…」
「んぅ…やら…♡ゆうやともっときすする…♡」
「しょーがねぇやつ…ん…はぁっ…莉玖、悪いけど、俺はまだイってねぇからな」
「あ〜…♡♡もうらめっていったのにぃぃ♡♡」
「ダメなのに締めつけんなよ。まだちんぽ足りてねぇの?」
「んぁぁ♡♡きゅうにっ♡お、くッ♡ぁぁあぁぁあずぼずぼされるのすきぃぃい♡」
彼は俺の意識が再びトんでからも荒々しく俺を抱いた様で、目が覚めると既に液体が垂れ流れている孔から、更にごぷりと彼の濃い精液が垂れ落ちてきた。制服のシャツだけ羽織った身体中にも、精液が飛び散っている。
いつも終わったら山田が拭いて、静液を孔から掻き出してくれるのだが、山田も力尽きた様に、俺の横で制服を脱ぎきらずに寝ている。
(……十八時半。夕食前にシャワー浴びたい。ローション、乾いてペリペリだし…)
シャワーを浴びていると、尻の孔から垂れ落ちた残りの精液が排水溝に一緒に吸い込まれていく。
シャワーの水分でローションの滑りが戻り、ぬるついた身体をボディスポンジで丹念に洗う。
ゴシゴシと単純な作業を繰り返していると、段々と頭がぼうっとして、山田に言われたあの言葉が浮き上がってくる。
〝結婚は破談にした〟
嬉しい、だけど本当にそれでいいのかと不安が過ぎる。
俺は、お前が全てを捨てる程に価値がある男なのだろうか。
(噛み痕とキスマーク、沢山ついてんなぁ…)
視界に飛び込んでくる、あの男が俺の肌に刻んだ痕。
好きだから怖くなって、記憶を忘れた。目覚めると、彼は結婚相手と破談になって、俺とずっといると約束してくれた。それを、強く望んでいた。なのに、俺の心はまた変な靄がかかる。
(好きって何なんだよ。浮かぶのは疑問と矛盾ばっかりじゃねーか…)
好きになればなるほど、何が正解なのか、俺にはまだ分からない。
初めて殴られて、俺の中を無理矢理こじ開けられたあの日を、何だかふと、思い出す。
「なぁ、マジで凄い衝撃受けるくらいお前の顔好きなんだよ。彼女とかいるなら速攻別れて俺の恋人になって?」
「うるせぇっ! 気持ち悪りぃんだよこのホモ野郎! 退けやクソが!」
「……ふーん。絶対無理? 俺、こんなにお願いしてるのに?」
「うぜぇ…あーっ! もう退けや!!」
自分と付き合えと煩い山田を押し退けようとした次の瞬間、俺は地面に転んで、鼻に強い痛みを覚えた。鼻の下を擦ると、真っ赤な血。
起き上がろうとすると、山田は俺の腹を足で思いっきり踏みつけた。内臓が抉れる様な痛みで悶絶する中、俺に馬乗りになった山田はまた顔面に一発拳を入れた。
今迄喧嘩してきて分かったのは、武道の有段者の殴りや蹴りは一発が重いって事。山田の拳は、俺が受けた中で一番重かった。
〝こいつには勝てない〟そう思った瞬間俺は負けた。頭を掴み、俺をじっくり観察する彼に、恐怖すら感じた。
「ん〜? 怯えてんの? か〜わいい…」
鼻の下の血をべろりと舐められて、そのまま彼の唇が俺の唇を覆う。初めてのキスは鉄の味だった。
「な、西園寺。お前はもう俺の恋人なの。言う事聞かねーなら、無理矢理聞かすだけ」
「……やめ、ろ」
「殴られて痛くて無理矢理セックスするのと、最初痛いけど段々気持ち良くなるセックス、どっちが良い?」
にっこりと笑う山田は、そのまま俺を適当な場所へ連れ込んで無理矢理レイプした。
嫌なのに、本当に段々と感じてしまったあの時の俺。今や、あいつのモノを挿れて欲しくて堪らない身体にされてしまった。
(まさか自分があの時の母親みたいに喘ぐなんて…男でも結局血は一緒ってか…?)
俺の身体も、心も、お前はいつだって作り替えてしまう。
繋がりが、糸の様に目に見えたらいいのに。そしたら俺は、もう少しだけ安心出来るのに。
つないでいたい、つながりたい、つながっていたい。
それは、手を? 身体を? 心を?
一瞬だけじゃ、もう足りない。
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