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沢木からの手紙2
居間のソファに座り、沢木からの手紙を読んだ。左手には、いつものようにネイビーの文字盤の腕時計をつけている。この腕時計はずっと私のそばにあった。手紙の続きに目を通す。
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突然、手紙が届いてびっくりしただろう。
あれが見つかってからだ。
僕がきみを夢で抱くようになったのは。
老人ホームへ行くことになった親父に、何か部屋に置きたいものはないかと聞いたんだ。
親父は何かを言いかけてやめた。気がかりになり、親父の書斎にある机の引き出しを探ったら見つけた。
一枚の便箋……僕がきみに残したあの手紙と同じマークが印されていた。親父も泊まったんだろうな、あのホテルに。
便箋には、こうあった。たったひとことだけ。
『女にしてくれてありがとう』
おふくろの字なのかはわからない。もう亡くなったおふくろは筆不精で、日記や予定を書く習慣がなかった。
それでも若い頃は、こんなことを書く女だったのかもしれない。
親父には聞けずにいる。便箋はいまでも家にある。
あの日、きみの枕元に置いた手紙。まだきみの手元にあるのだろうか。
僕との夜を悔いているなら、すぐに捨ててくれ。この手紙とともに。
そんなことがないと祈るが……もしきみが不慮の事故に遭えば、誰かが僕らのただならぬ関係を暴くかもしれない。
手紙を捨てることになり、僕に会わないことを選んでも。
このワインは飲んでほしい。
僕の半身ともいえるワインが、きみの身体を駆けめぐる。
きみを愛した僕にとってこんなに嬉しいことはない。
きみと過ごした夜は過ちではなかった。その思いは、昔もいまも変わらない。
会えるのなら……。
あの日の約束を、僕が勝手にきみと結んだ約束を果たそう。
沢木真昼
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