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沢木からの手紙
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植野 旭 さま
きみへ手紙を書くのは二通目か。
……いや、あんな走り書きは手紙とはいえないかもしれない。
僕はきみと別れてから、随分と欲張りになってしまった。
親父から継いだワイン畑を広げることはさすがにしなかったが、敷地にレストランをオープンさせた。きみは東京で美味いものを食べているんだろう? その鍛えた味覚で、僕のレストランが通用するか確かめてほしい。
……というのは、この手紙を書くための都合の用件だ。
あの夜のことを、僕は忘れていない。
きみもそうなら、僕が造ったこのワインを持ってホテルまで来てほしい。いま、仕事のために東京に来ている。
『ソル・レヴェンテ』
このワインは、イタリア語で『朝日』という名前だ。
植野。僕は欲張りになってしまったんだ。
きみに会いたい。
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