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もうひとつの手紙
「答えはわかってるだろ、沢木」
私は手紙をテーブルに置くと、手帳に挟んである折りたたんだ便箋を広げた。白百合のエンボス加工が施されている。沢木が父親の書斎で見つけたものと同じデザインのはずだ。
沢木の言う通り、この言葉を誰かに知られたら私たちの関係は明るみになるだろう。
しかし、私は家に置くことなどしなかった。
一線を超えなくても、あの夜、沢木はさまざまなことを私の肌に残してくれた。
その翌朝に彼が書いた文字は、彼が指先で私を愛した跡のように思えた。
ときおり文字を指でなぞり、支えにして私は生きてきた。
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