4 / 5

もうひとつの手紙

「答えはわかってるだろ、沢木」 私は手紙をテーブルに置くと、手帳に挟んである折りたたんだ便箋を広げた。白百合のエンボス加工が施されている。沢木が父親の書斎で見つけたものと同じデザインのはずだ。 沢木の言う通り、この言葉を誰かに知られたら私たちの関係は明るみになるだろう。 しかし、私は家に置くことなどしなかった。 一線を超えなくても、あの夜、沢木はさまざまなことを私の肌に残してくれた。 その翌朝に彼が書いた文字は、彼が指先で私を愛した跡のように思えた。 ときおり文字を指でなぞり、支えにして私は生きてきた。

ともだちにシェアしよう!