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#4

(今何時?)  枕元のスマートフォンを無意識のうちに探していると、手が髪の毛らしきものに触れ、覚醒する。  誰? どこ? (なんで、カズがここに?) 「起きた?」 「みたい」  髪を撫でられながら、目を合わせながらキスを繰り返していると、昔に戻った気がする。購入した覚えがないシャツ――藤埜のシャツか、彼が作ったシャツ――を着せられている。 「ごめん。なんか焦って、関係持ってしまって」 「焦ってたの気付かなかった。すごい気持ちよくて……」  急に、彼の奥さんの顔が脳裏に浮かぶ。裏切った後の寂しさと、手に入れられないむなしさに、ため息を吐くしかなかった。 「ならよかった。すっげーエロくって、マジヤバかったぜ。しばらくはこういうことしないから、ただの友人として会っていい?」 「いいけど、何考えてる?」  自分こそ何を考えているのだろうか。奥さんがいようがいまいが、勝算さえあれば奪えるのではないか。しわだらけのシーツをきつく握る。  怖い……。  こんなゲスみたいなこと考えて、藤埜と子どもがいればそれでいいと思うなんて、最低だ。 「内緒。もう一度やり直すため、頑張っちゃうって言うことかな」 「あっそう。奥さんは?」  音和を抱き締め、甘えたように胸に顔をうずめる。 「やっぱり、体型変わったな。今度はちゃんとフィットするのを作るよ」 「気持ちだけ受け取っておく」 「冷たいなあ。ねえ、もう一回していいか?」 「どうぞ」  空が白むまで、抱き合い続けた。  寝ているのを確認し、お守り代わりに持っていた渡し忘れた写真を封筒に入れ、サイドテーブルに置く。 (指輪してないんだ)  キャリーケースを引きながら、ほっとした気持ちを飲み損ねて冷たくなったミルクティーで飲み込むと、脂っぽさと甘さが口の中に広がった。

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