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第2話

 勝手気儘に生きている室生に、どうしてこんなに固執するのか。秋月は自分のことが、時々よくわからなくなる。  片親だった秋月を、室生は天性の奔放さで翻弄した。マンションの家が隣同士だというだけで、父と一緒に引っ越してきた秋月を、差別も区別もしなかった唯一の人間。その性格は、鍵っ子だった秋月にとって、とても眩しいものだった。遊ぶ時も眠る時も、誰かとこんなに長い時間を共にしたことはなかった。母親は秋月を愛さず、父親には秋月を愛する時間がなかった。その寂しさを埋めたのが、室生の存在だった。 「チカー、きて!」  浴槽に入った室生が秋月を呼ぶ。秋月が風呂のドアを開けると、室生は白い裸体を惜しげも無く晒して、スポンジを渡してくる。これで洗え、という命令なのだが、秋月は気分を害することなく、片手の使えない室生の白い肌を擦っていく。  室生が秋月に裸体を晒すようになった理由は簡単で、ある日ふざけて「不便なら洗ってやろうか」と言ったら、「いいの?」と目を輝かせて本気に取られた。以来、室生の身体を洗うのは、秋月の仕事だ。  背中から胸と腹を経て、それが下草に届くと、室生がわずかに息を飲んだ気配がした。  中心で、少し芯の通ったそれを愛撫するように丁寧に洗うと、あわいから後ろの孔にスポンジを、指を這わせる。いつもくだらない冗談ばかりを言っている室生が唯一、笑わないその瞬間を借りて、秋月は孔を泡で拭い、シャワーを使って泡を水で落とした。 「……お前にされるとなんか、」  泡が汚れを包み、落ちていく頃になると、室生はやけに神妙な声を出した。 「何か人にされると、変な気分になるな」  言い換える室生を、秋月はいつか襲ってしまう気がする。 「何だ、変な気分って。失礼な」 「や、何か……エロい?」 「くだらないこと言ってないで、さっさと温まれ」  湯船に向かって背中を押しながら、秋月は自分の甲斐性のなさを内心で悔いた。 (俺に、もっと勇気があったら……)  幼馴染を相手に欲情している自身を晒して、室生にそれを晒して、弱みに付け込んで、相手をしてもらうぐらいのことが、どうしてできないのだろうと秋月は思った。  体のいい綺麗事をいくら並べようと、美麗辞句の間から零れるのは、消化不良な情欲だった。

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