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第4話

「チカちゃん……」  出社前に玄関で靴を履いていたら、背中に室生の頭が当たった。子どもの頃に使われていたあだ名で、甘えてくる。 「さっきはごめん、チカ」 「晩御飯のおかずは一品だからな」 「う……」  昼は弁当をつくってあるのでチンして食べられるようにしてある。夜は、おかずが一品だけだから、手抜きできると秋月が言うと、室生は細い背をしゅんと縮こまらせた。 「お前の好きな白菜鍋にしよう」 「!」  室生がぱっと顔を上げたのを見て、秋月は我ながら甘いなと内心、苦笑した。 「じゃ、いってくるから」 「いってらっしゃい」  秋月は、室生の顔を見ずに、ドアを開けた。振り返って、室生に見せられるような顔じゃなかったからだ。

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