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第5話

「あ、そうだ。これ」  とりあえず持ってきたものを渡そうと持ってきた紙袋を見せると、空木くんは子供みたいにはしゃいで喜んでくれた。曰く、欲しかったけれど住所が書けなかったとか、実家か事務所の住所にしようかと思ったけど、結局バレないように諦めたんだと。あまりに嬉しそうにするから、渡したこちらまでなんだか嬉しくなってしまった。 「えっと、じゃあゲストの件は俺が言っておくから気にしないで。俺も青色2号さんに会ってみたかったから、こうやって会いに来てくれたことがなにより嬉しい。だからこれは俺たちだけの秘密ってことで」 「すみません」  本人が公にしたくないというのならそれでもいい。少し残念ではあるけれど、本人が癒しとして求めてくれる番組ならば、このままそうでありたいと思う。  最初のうちは少しだけ空木くんの顔を思い浮かべてしまうかもしれないけれど、俺にとっては「青色2号」さんの方が付き合いが長いから、それほど意識しなくても今まで通り対応できるだろう。 「謝らないでよ。むしろ二人だけの秘密なんて、ワクワクしない?」 「二人だけの秘密……」  なんだか感慨深げにその言葉を噛みしめるように呟いた空木くんは、「それでお願いします」と笑ってみせた。口角を上げただけの微笑みが絵になるほどかっこいい。  言葉遣いも丁寧だし決して荒っぽいわけでもないのにしっかり男らしくかっこいいのは少しずるいと思ってしまう。スマートながらに骨格がしっかりしているから男臭くなくても男っぽく見えるのかな。それとも仕草だろうか。 「あの、うみさん」  カップを傾けながら窺う視線が露骨すぎたのか、空木くんが同じように窺う視線を返してくる。  そんなつもりはなかったけれどぶしつけすぎたか、と慌ててカップを置いて脇に立てかけてあるメニューを手に取った。 「あ、お腹減ってる? なんか食べるなら」 「この後予定ありますか」  せっかくここまで足を運んでくれたんだから、いくらでもおごるよと言おうとしたタイミングで、空木くんは妙にかしこまった態度でそう問いかけてきた。 「この後? 特にないけど……」 「もう少しだけうみさんと話したいので、飲みに行きませんか」 「飲みに? えっと、俺はいいけど空木くんは大丈夫なの?」  時間もそうだけど、ただいま主演映画公開中の男がこんな風に顔を晒して飲みに行って大丈夫なのだろうかと心配になる俺を、空木くんは強い頷きで肯定する。 「このチャンス逃したら、またいつうみさんに会えるかわからないし、少し積極的に行こうかと」  まるで映画の決め台詞のようなかっこよさでそう言って、空木くんは少し子供っぽく笑った。

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