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第7話
「ん、は……んっ、ぅ」
お会計、タクシー、壮良くんの家、玄関でキス、ベッド。以上、ここまでの経緯。
靴は脱ぎ捨ててきたし服も脱ぎ切っていないし、どれだけ理性より欲望を優先させているかがわかりやすい状態で大人げないことこの上ない。それでも無事なんとかベッドまで辿り着いただけ褒めてほしい。
……もちろん酒のせいで理性が緩くなっているのはわかっていて、流されている自覚もある。
とはいえお互い特別な存在だったのは確かで、実際会ったのは初めてでも、付き合いは十年だ。早いということはないだろう。
脚を開かれ最低限でも慣らそうというギリギリの優しさに感謝しつつ、体を這う壮良くんの唇が鳴らす生々しいリップ音に酔う。
こういう時、音は大事だ。それを知っているのかいないのか、壮良くんは黙ったまま舌と指先でぬめった音を響かせ俺を耳から煽る。
なにより壮良くんは吐息がエッチだ。荒い息を何度か抑えるように呼吸を整えているのがゾクゾクくるほど色っぽくて腰にくる。
「……うみさん、限界」
「ん、いいよ。だいじょぶ」
そんな壮良くんからの懇願に似た訴えに、なんとか笑みを浮かべて答えた。正直体的にまだ用意はできていないけれど、壮良くんがかなり我慢していることは見てわかるくらいだから早く受け入れたい。そんな俺の気持ちを見抜いたのか、壮良くんはほんの少し困ったように笑って、それから俺の脚を抱えた。
「ごめん、力抜いて」
「んっ、う」
呟くような謝罪とともに一気に最奥まで貫かれて、喉を詰まらせる。苦しいくらいの性急さと強引さ。だけど続けて突き上げられると苦しさよりも湧き上がってくる熱に声が洩れた。
「あ、っあ、あッ」
こんな風に勢いに任せたセックスをするのなんていつぶりだろう。
付き合う相手は年上が多くて割と余裕のある行為ばかりだったから、こういう情欲をぶつけられるような抽送は珍しくてその勢いに飲まれそうになる。
制御の利かない気持ちよさがちょっと恐い。
「んんッ、あっ……んっ」
「ダメ」
年下にいいようにされているのが少し恥ずかしくなって、手の甲を噛むようにして声を抑えたら、目ざとくそれを見つけられた。優しく、だけど有無を言わせぬ力で俺の手を剥がし、代わりに壮良くんはぐぐっと押し込むように距離を近づけ。
「うみさんの声、もっと聞かせて」
「あッ!」
そうやって低く空気を震わせるように囁いた。
その声があまりにいやらしくて、危うくイきそうになって大きく息を吸う。まだ冷めたくない。
するとその音が耳についたのか、壮良くんが体を起こして小さく笑った。それから先ほどとは違ってゆっくりと中を擦り上げるように腰を動かしてくる。勢いに任せないその動きは、より確実に俺の感じるところを抉る。
「感じてるうみさんすごいエロい……。何回だってイかせてあげるから我慢しなくていいのに」
「やっ……そらくん、それやだ……っ」
ずっずっと体を伝わって肉が擦れる音がする。ペースが遅いわりに突き上げるように刺激されると、焦らされているようで余計感じてしまうじゃないか。しかもそんな自分が認識できてしまうから恥ずかしさで顔が熱い。
「本当に嫌だと思ってる?」
「ひあっ……! あ、い、いいっ」
無意識のうちに求めるように揺れる腰に手を触れ、壮良くんがそれをわからせるように腰を打ち付ける。今度こそ遠慮なく喘いでしまって、そうするともう止まらなくなった。
「そらく……」
「うみさんが、俺のでイくとこ見せて」
深く奥まで穿たれて、その良すぎる突き上げよりも俺を絶頂に導いたのは、俺を見下ろす壮良くんの表情。今までもずっとかっこいいなと思っていたけれど。
ベッドの上で一番いい表情見せるなんて、卑怯でしょう?
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