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親友よ、きみの心の中で燃え盛る炎は

 夢うつつで襖を()()てする音を聞く。眼鏡のレンズが暁光にきらめき、ひょろりとした後ろ姿が襖の向こうに消えるさまが、寝ぼけ眼に映った。  二度寝をしてしまい、竿竹売りの口上に起こされると、明け方のひと幕は蜃気楼のように儚い。  唇のカーブを指でなぞる。高瀬にくちづけられる夢を見るとは、BL稼業の弊害に違いない。  後ろめたさをねじ伏せて高瀬の部屋を覗いてみると、不動産屋のホームページを閲覧していたふうで、パソコンのモニターに単身者向けの物件情報が並んでいた。  朋樹はパソコンデスクに飛びついた。生活費を節約できる、と誘われて一緒に部屋を借りて以来、たまには喧嘩もするが持ちつ持たれつやってきた。  高瀬が独り暮らしをしたいと考えている? どうして急に?  そこに高瀬が手洗いから戻ってきて、朋樹をなかば押しのけながら椅子に腰かけた。 「俺を捨てて出ていくのか」  情ないことに声が潤む。 「俺ひとりの稼ぎじゃ風呂つきアパートの家賃を払えない」 「俺の存在価値って家賃の二分の一なんだ」 「言葉の綾、綾だってば」  じろりと睨まれて正座にかしこまると、高瀬は眼鏡を外した。ごしごしとレンズを磨きながら、早口でまくしたてる。 「毎晩、毎晩、ムスクの移り香をぷんぷんさせて帰ってきて。マジに苛つく」  朋樹はスウェットシャツの袖口に顔を埋めて鼻をひくつかせた。 「トンビにアブラゲ。オーナーだかに惹かれはじめているのがわかってて久世のそばにいられるほどメンタル強くない」 「年齢がほぼ倍のおっさんに惹かれるぅ!? おまえ、参考書代わりのBLコミックスを盗み読みして、設定が似てるやつと現実をごっちゃにしてんじゃねぇの」    膝立ちになったとたん、どつかれて仰向けに倒れた。すかさず胸倉を摑まれて引きずり起こされる。  もがくと、やるせなさと恨めしさをない交ぜに宿した視線に射すくめられた。

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