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いざ勝負!

 心の中の振り子が右に左に揺れる。  選択肢は三つ。才賀を選ぶか、高瀬を選ぶか、もしくはまとめて引導を渡すか。  知恵熱がぶり返すほど考えに考えても正解はどれなのか一向に答えは出なくて、頭がパンクしそうだ。  さて、シャンパンがふるまわれてイベントがはじまった。可愛い系のスタッフも、知的なスタッフも、BLの主人公そのままの婀娜っぽい仕種を交えて科白を言うたびに拍手が送られる。   才賀が登場すると、地響きクラスのどよめきが起きた。金銀のオーナメントが輝くクリスマスツリーを背にしてポーズをとるさまは、まばゆいばかりにきらびやかで激写の嵐だ。  オーラ全開のかっこいい才賀へと期待が高まるのをよそに、当の本人は両手でハートを形作り、それを胸元にあてがうと、朋樹に熱い眼差しを向けてひと言。 「そういうとこ、好き」  意表を衝くキャピキャピ感に口笛が吹き鳴らされて、十点の札が一斉にあがった。  高瀬の番がきた。眼鏡を押しあげて凛と背筋を伸ばすと、もっと早く勇気を出しておけばよかった、と悔やんでいるような狂おしげなものをにじませて科白を言った。 「俺には……お前だけだ」  切なげに語尾が震える。  俺の恋心は行き場を失ったまま無駄に熟成を重ねる、と訴えているようで朋樹は唇を嚙みしめた。恋愛音痴の激ニブで、親友面しておまえに甘えるわ、じゃれるわ。  ある意味、高瀬、おまえをもてあそびたい放題にもてあそんできた自分をぶっ飛ばしてやりたいよ。  トリを飾るのは朋樹だ。心が千々に乱れていても、()の久世朋樹から役者の久世朋樹へと頭を切り替えて進み出た。  サンプルをアレンジしたもので、と前置きしたうえで才賀の足下にひざまずく。 〝この御方を密かに恋い慕う執事〟の仮面をかぶり、恭しげに手を捧げ持って、甘くかすれた声で語りかけた。 「わたしには、あなたさまだけです」  お芝居にすぎなくても朋樹が才賀に愛を囁く場面など生き地獄を味わうに等しい、というふうに紺のブレザーをはためかせて背中を向ける姿が視界をよぎった。  罪悪感に苛まれながらも、情感たっぷりに言葉を継ぐ。

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