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君も寝癖も(4)
「ん……っ、」
吉川の柔らかな唇の感触。
思った通り、吉川はどこも柔らかいんだね。
味わうようにして、角度を変えてキスをする。
その時、吉川が俺の制服を、ぎゅうっと握りしめた。
「あ、」
とんでもないことをしてしまったと、今更ながらに気づいた。
慌てて唇を離したけれど、そうしたところでもう遅い。
キス、してしまったんだから。
「ごめん」
吉川の顔を見ることができない。
「吉川、ごめん」
俺の制服を掴む手は、小さく震えている。
吉川のこと、怖がらせてしまった。
だって、友人からいきなりキスされるんだぞ。
それに、俺は男だし。
驚いただけじゃない、きっと嫌だって思ったはず。
あぁ、何でどうして。
気持ちのままに動いちゃいけないのに。
好きな相手の気持ち、考えないでどうするんだよ。
「お……、の……」
頭を抱える俺に、吉川が呟くようにして名前を呼ぶ。
その声に、反応に怯えながらもゆっくりと目線を吉川へと動かした。
ちゃんと、目を見て謝らなきゃ。
「……っ、」
だけど、いざ吉川を見てみると、思っていた反応とは全然違って。
頬を赤らめた吉川が、潤んだ瞳で俺を見つめている。
嫌悪感も恐怖も伝わってこない。
ねぇ、吉川。
それって、もしかしてさ。
「吉川……?」
じっと見つめると、吉川がそっと目を閉じた。
少しだけ、突き出された唇。
「……っ、」
俺とのキス、嫌じゃないってこと?
「吉川、」
なんだか全てがどうでもよくなって、俺はもう一度唇を重ねた。
後頭部に手を回し、逃げられないように腕の中に閉じこめる。
ねぇ、吉川さ。
これって、そういうことでいいの?
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