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誰かを好きになることは(7)
「俺がどんな想いでお前に話しかけたか分かるか? どんな想いを抱えて、今まで一緒にいたか、分かってんのか……!」
そう叫んで、矢野くんがドンッと力強く床を叩
いた。
僕は何も言えなくて、また俯くことしかできない。
「急に避けられて、俺、お前に嫌なことしてしまったのかとか、ずっとずっと考えてて。それなのに理由を言えないとか、ふざけてんじゃねぇよ」
「ごめん、なさい……」
「今は言えないとか、自分勝手すぎだろ」
「ごめん……な、さい……」
「お前のことが好きな、俺の気持ちは、どうでもいいってか……」
…………え?
さっきとは違う意味で鼓動が早くなる。
自分にとって、都合の良すぎる言葉が聞こえた気がして。
「矢野……く、ん……?」
「わりぃ、連れて来といてアレだけど、もう帰って」
「矢野くん……っ」
「もう帰れって……! 今の俺、お前に何するか分かんねぇから……」
“くそ……、俺、かっこわりい……”
小さくそう呟き、ぐしゃぐしゃに頭を掻いて。
矢野くんは下を向くと、黙り込んでしまった。
僕の知ってる矢野くんは、いつも笑顔で優しくて。怒ったり取り乱したりすることなんかない人で。
でも、今の矢野くんは……。
「矢野、くん……」
ねぇ、矢野くん。
僕のこと、そんなに想ってくれていたの?
「矢野くん……!」
僕はソファーから立ち上がり、ドアの近くに座っている矢野くんの元へと駆け寄った。
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