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ばかとバカの関係(3)
何を言うつもり? 何をするつもり?
ばかの言動は予想できないから、どうしても構えてしまう。
仕方がないなぁと、だいたい背の高さが同じくらいになるように少し膝を曲げて近づけば、ちゅっと音がして、唇に柔らかい感触がした。
「……え?」
「なぁなぁー、ため息つくと、幸せが逃げちゃうんだぞ」
“そんなことも知らないの?”
“まったくばかだなぁ”
ばかはばかのくせに、戸惑う俺を余裕そうな顔でバカにしてくる。
「相川が吐きだしちゃった幸せを、僕がつかまえて返してあげたの」
「おまっ……」
“返した”なんてもんじゃない。
これは完全な“キス”だろ!
いくらばかでもキスは分かるだろ……!
ちょっとさぁ、コイツをどうしたらいいの。
んでもって、この胸のドキドキをどうしたらいいの。
真っ赤になった頬を隠すように手で覆うと、ばかは「じゃあね~」と言って、走って行ってしまった。
「ばかじゃん、本当」
「あぁもう! 本当にばかじゃんっ!!」
小さくなっていくばかの背中を見つめながら、“でも唇すげーやぁらけぇ”なんて考えてる俺もやっぱりばかで。
だから、ばかもばかなりに頑張ったって知らなくて。
次の日、顔を真っ赤にして「おはよう」と小さく挨拶したばかを見て、そこでやっと気が付いた。
ばかだよ本当。
分かりにきーっての、まじで。
でも、“そんなところが可愛くて好き”だなんて、やっぱり俺はバカ。
今日は久しぶりに名前を呼んで、他の奴に取られる前に俺が膝に乗っけて抱きしめてやろうかな。
「柏木」
「……っ!」
大きく目を開いて俺を見るばかを見て、思わず口元が緩んだ。
END
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