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優しさの意味(2)
「んっ……」
山下の頬を指でくすぐり、その可愛い寝顔を見ていると。
小さく声を漏らして、山下がゆっくり目を開いた。
「わりぃ、起こしちまったな」
「んーん、だいじょ……ぶ……」
へにゃって笑って、山下が俺の背に手を回す。
「遠瀬くんは、優しいね……」
「え?」
「いっつも僕と一緒にいてくれるもん……」
「……お前が思ってるほど、いい奴じゃねぇよ」
「遠瀬くんは、いい人だよ……」
ふぁ、と欠伸をして、山下がまた目を瞑る。
しばらくすると、すーすーと可愛い寝息が聞こえてきた。
俺は頬に触れるのを止め、山下をもっと抱き寄せると、ふわふわの黒髪にそっとキスをした。
なぁ山下。
俺はね、お前が思ってるほど、いい奴じゃないんだよ。
お前が俺にもっと懐いて、
もっと心を許して。
俺が離れられなくなってしまったように、お前も俺から離れられなくなってしまえばいいって。
そんなこと、考えてるんだよ。
純粋に優しくしようとして、お前に優しくしてるんじゃない。
全部自分のためなんだ。
「俺が助けても、お前は結局逃げらんないね」
自由になんてなれない。
「ごめんな……」
“でも好きなんだよ”
抱きしめる腕に力を込めると、じわっと目頭が熱くなった。
END
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