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君は、僕のもの。(2)
「ばか……」
「ん? 俺が?」
「うん、君のこと。ばかだって、そう言ったの」
「え~、何だよそれ、ひどいこと言うのな」
ひどいのは、どっちだよ。
「僕は、ひどいことなんて言ってない」
ぷうっと頬を膨らませると、彼はまたふわりと笑った。
悔しい。
今は僕だけに笑いかけてくれているけど、この笑顔も僕だけのものじゃないんだ。
みんなに優しいし、みんなの人気者。
笑ってる彼の周りに人が集まるの。
彼の笑顔が、みんな大好きだから。
初めの頃は、取り囲まれている彼がたまらなく羨ましかった。
僕も彼みたいに人気者になれたらなって、地味な存在だけど、そんなことを考えてた。
でも彼のことを好きになってからは、取り囲まれている彼のことを、少しだけ嫌いになった。羨ましいだなんて、そんなこと思わない。
僕はみんなに囲まれなくていい。彼も、人気者じゃなくていい。
ずっとずっと、僕の横にいればいいのにって。
好き、なんだもの。
彼のこと、とても好きなの。
でも、きっと何があったって、彼は僕だけのものにはならないんだ。
……ほうら、ね。
僕と二人で話す時間も、長くは続かない。
今日は、いつもの二人の時間さえももらえないのか。
さっき、たくさんしゃべってたのに、まだ彼とのお話があるの?
「ねぇねぇ、真山くん。お話があるから、今日の放課後少し時間いいかな?」
女の子が二人、僕たちのところにやってきた。
そうやって緊張して話す女の子に、頑張れと小声で応援する女の子。
どう見たって、これは告白だ。
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