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君は、僕のもの。(4)
手を出して、と彼が言う。
僕は恐る恐る、膝の上に置いていた手を彼の方に伸ばした。
満足そうに笑って、彼はその手を優しく握る。
「俺は何があったって佐倉を選ぶよ。佐倉のこと、すごく好きだから。佐倉以外、考えられないもん」
「……も、いいから、」
「よくない。いっつもお前は一人でぐるぐるしてるだろ。それ、するだけ無駄だからな」
「……う、」
「佐倉が、好き。佐倉も俺のこと、大好きだよな?」
「……大好き。真山くんじゃなきゃ、僕、やだよ」
「俺も、佐倉じゃなきゃ嫌だよ」
明日も明後日も、これから先もずっと。
彼はクラスの人気者で、周りにはきっと人がたくさんいるんだ。
僕はまたそれを、いつものように一人離れたところで見ているに違いない。
彼が告白されたって噂を、耳にすることだってあるだろう。
でも、彼は僕だけのものみたい。
みんなに囲まれて笑ってても、それでも彼は僕だけのもの。
僕だけの、彼なんだ。
「僕は、真山くんの笑顔が好きだなぁ」
笑顔も僕だけのものにはならないって、そう思ってた。
でもそれは違うね。
だって、好きの気持ちが入ってるから。
僕への笑顔は、特別なはずだ。
「俺は佐倉の全部が好き」
ふわりと彼が笑う。
僕の胸に、幸せが広がる。
「……僕だって、全部好きだもん」
小さな声でそう言い返すと、僕はほんの少しだけ、握る手に力をこめた。
END
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