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どうしようもなくて(1)
「ねぇ、いつまで逃げんの?」
制服をぐちゃぐちゃにされ、ガタガタと震えながら教室の隅にうずくまる目の前のソイツの背中に、俺は思いっきり足を乗せた。
「痛っ……、」
両手で頭を抱え、小さく声を漏らす。
俺は乗せた足に力を込め、そのまま蹴り飛ばした。
ものすごい音を立てて、ソイツが近くの机にぶつかる。
「……っ、」
気に入らない。
どうして、ねぇ、どうしてだよ。
うめき声をあげるだけで、抵抗しようともがくことさえしない。
俺は、ソイツの胸元を掴み、そのまま上体を起こした。
「ねぇ、悔しくないの? イライラしないの?」
「……あ、ぅ、」
「そんなんでいいわけ?」
歯を食い縛り、恐怖に怯えるその目には涙が浮かび、「離して」と言うその声も口の近くに耳を持ってかないと聞こえないくらいに小さい。
お前それでも男なの?
「お前がね、何かしたなら分かるんだよ。けどさ、何もやってねぇだろ」
「……ひぅ、」
「俺が見ててイライラすんの。ちったぁ、闘って見せろよ」
あ? と顔を寄せて怒鳴り散らすと、今まで以上にガタガタ震えて、大粒の涙が目から溢れだした。
鼻水という名のおまけ付き。
「きたねぇな」
なんて口では言いながらも、それすらも愛しいなんて思ってしまう俺はかなりの重症。
薬貰ったって手術したって治らない末期のびょーき。
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