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永遠に(3)

「とおるくん、泣かないの」   “結婚だけが全てじゃないよ” 優しい声が耳に響く。 抱きしめられた体がだんだんと熱を帯びて、彼への想いがあふれ出た。 好きなんだ、ずっと傍にいたいんだよ──って、いっぱいいっぱいな俺は、それを言葉にすることはできないから。 ただひたすらに何度も何度も、心の中で叫び続ける。 「あき……の、さ……ん」 何とか絞り出した声は掠れていて。 ねぇ、秋野さん。 貴方が、好きで好きでたまらないの。 「とおるくん、ちょっと待っててね」 突然、彼はそんなことを言って、俺を抱きしめていた手を離してしまった。一気に下がる体温に寂しさを感じ、ソファーから立ち上がる彼の服の裾を掴む。 どこにも行かないで欲しい。 今は、俺の傍にいてよ。 だけど彼は、「すぐに戻ってくるから」と言って隣の部屋に行ってしまった。 「とおるくん」 隣の部屋から戻って来た彼が手に持っていたのはバスタオル。それをどうするつもりなのだろうか。 次の行動が予測できずに首を傾げると、彼はそっと俺の頭にそのバスタオルを被せた。 「結婚式、しよっか」 彼が何をしようとしているのか、すぐには理解できなくて。固まったままぼんやり見つめていると、彼は俺の手を取り指に何かをはめた。ひやりとした感触。 もしかして──と胸が高鳴る。

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