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分かったことは。(3)

「……いじめか? 俺が独身で彼女いなくて暇してるから、それ分かっててわざとこんなに仕事振り分けられたのか?」 最後にどーんと仕事を持ってきたのは、主任だ。主任が俺をいじめたってこと? 横目でちらりと、主任の席を睨んだ。 「……あ、」 その瞬間、数日前の記憶がふと流れてきた。そう言えば主任、この間俺にやたらと質問してきたけれど、それはこのためだったってことか。 さり気なさすぎて何も気にしていなかったけど、よくよく考えてみれば、あのタイミングで主任が俺の恋愛事情に口を出す必要性はない。 そうか──と、ホッとした顔をしたのは、仕事を押しつけられると安堵したから? いつもにこにこと優しい主任は、実はそんな腹黒いこと考えていた? 「やられたか、」 一度そうと思ってしまったら、主任が悪い人のように思えてきた。そうだとは限らないのに疲れがピークの俺には、否定できるほどの心の広さは持ち合わせていない。 俺は首をぐるりと回し、それからパソコンの画面へと視線を戻した。例えそうであったとしても、受け取ってしまったのだからもうこれは俺の責任だ。 主任を責めたところで仕事が減るわけでも終わるわけでもないのだから、とにかく早く帰ることができるようにとりあえず今はキーボードを叩くしかないのだ。

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