78 / 226
分かったことは。(4)
「はぁ~」
本日何度目かのため息。もう数え切れないくらいに出ている。目も、だいぶ疲れてきた。
しばらく黙々とパソコンに向かい続け、次に時間を見ると時計が九時を差していた。あれから二時間経ったのか。さすがに腹が減ってきたな。
「うーん、」
とりあえず、作成し終わりたい書類は残り一枚。けれどその前に何か腹に入れておきたい。喉も乾いたし、いったんコンビニでも行こうかな。
俺は一度大きく伸びをして、椅子から立ち上がった。
スマホを手に取り、ラインをチェックしながらドアの方へと歩く。
一番仲の良い同僚から、「すまん」の三文字だけ送られてきていた。本当にそう思っているのかは謎だけれど、三歳になったばかりの息子がいるし、家族でゆっくり過ごす方がいいに決まってる。
俺は「楽しめよ」とだけ返し、オフィスのドアを開けた。
「あ、野崎くん」
スマホを弄りながら歩く俺の耳に、突然聞こえてきた主任の声。
疲れがこんなふうに症状になって現れたのかと、もう笑いしか出ない。
「あーはいはい、仕事してますよ、ちゃんとね」
一人でケラケラと笑いながら、聞こえてくる幻聴に対応してみた。不思議な感覚。独り言なのに、何だか違和感が。
ともだちにシェアしよう!