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分かったことは。(5)

俺は何となく変に思いながらも、特に何も呟かないツイッターのタイムラインを開いた。スライドさせながら呟きを確認しつつ、スマホ画面から漏れる光を頼りにして、暗い廊下を歩く。 「野崎くん」 やけにリアルに聞こえる主任の声。俺、これかなりヤバいんじゃあない? 疲れ相当溜まってる? 「ねぇ、野崎くんてば、」 声が、さっきよりも近くなる。よく聞けば、自分のと少しだけズレている足音が。カシャカシャと何かそれとはまた別の音もする。 え、ちょっと待って。いくら何でも怖すぎなんですけど。 俺は歩くスピードを速くした。そこで走り出さなかったのは、俺の中にある中途半端なプライドのせい。もしこれが俺の考えるあれ──幽霊であったとしたら。いくら幽霊が相手でも逃げ出したことにはしたくない。 「うああ!」 そんなくだらないことを考えていたら何かに腕を掴まれたような感触がして、思わず叫び声をあげてしまった。その何かを振り払うようにして腕を大きく振れば、カタリと固いものが飛んで行った音とともに、「わっ、」と驚いた声が聞こえた。 持っていたスマホで照らしてみれば、ふわふわの髪の毛が視界に入ってくる。 「あれ……?」 これはさっき幻聴で声を聞いた主任に見えるのだけど。

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