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分かったことは。(9)

声が、どうしても低くなる。主任に対して明るく対応できないから。いつもと違う俺に、主任の動揺が増すのが分かる。 ぎゅっと、腕を掴まれた。 「僕は、手伝いに、」 「え?」 「野崎くんを、手伝いにきたんだ。確かに、確かにね、君にたくさんの仕事を押しつけたけれど、それは、」 ぎゅうっと、また力が強くなる。でもその手は震えていて。声も、何だかそう感じるように思う。 「最初から、手伝いに来るつもりで、だって」 「主任? ……最初から手伝うつもりで、俺に大量の仕事を押しつけたと?」 「……そう、だよ。僕は残業するのなら、野崎くんとがいいってそう思って、」 「え……?」 「色々聞いたのは、仕事のこともあるけれど、でも押しつけるためじゃあなく、僕は知りたくて、……それは、」 そこまで言うと、主任は何も言わなくなってしまった。言わなくなった代わりに聞こえて来たのは、鼻をすする音。 もしかして、泣いてる? 「主任……?」 「ごめ、んなさい、野崎くん。ごめん、なさい」 「え? ちょっと、何で泣いてんすか?」 俺の腕を掴んでいた主任の手が、だらりと落ちてった。 下を向いてるから顔は見えなくなってしまったけれど、間違いなく泣いている。 俺が泣かせた? 何を、した? 「主任……?」

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