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分かったことは。(10)

どうしたらいいのか分からなくて、俺はとりあえずオフィスに戻ることにした。明るいところできちんと接しなきゃ、泣いてる理由も分からないし。 今度は俺が主任の腕を掴み、部屋の中へと引っ張る。 小さく抵抗していた主任も、俺が力を入れて引くと、諦めて大人しくついてきてくれた。 「主任、」 「……っ、」 「なぁーんであんたが泣いてるんですか」 「……、ぁ、」 ボロボロとこぼれ落ちる涙を、必死にごしごしと拭いている。あまりこすると目が赤くなるだろうに。この人は一体どうしたって言うのか。こんな姿は初めて見る。  男らしく強そうなイメージからはかけ離れ、歳のわりにはどこか幼さの残る顔をしていて細身な主任だけれど、こんなふうにして泣く姿は想像したこともなかった。しかも、俺が泣かせるだなんて。 「主任、」 それ以上目をこするなと、俺は主任の手首を掴み、目から離させた。それに驚き、俯いていた主任が咄嗟に顔を上げる。 やっぱり目元は既に腫れていて、目尻には涙が浮かんでいた。頬をぽとりと、涙が伝って落ちていく。 優しく親指の腹で涙を拭いてやれば、また次の涙が流れてくる。俺の親指を濡らした。 くしゃりと歪んだ顔は、歪んでいるのにどこか可愛らしく思えた。

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