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分かったことは。(11)

「いつまで泣くつもりなんですか?」 「……っ、」 「そんなにひどいこと言いましたっけ?」 「野崎……くん、」 掠れた声で、主任が俺の名前を呼ぶ。それからそっと、俺の手に自分のを重ねてきた。ゆっくりと目を閉じた主任の目から、また、大粒の涙が溢れた。 ああもう、俺はどうしたらいいんだ? 腫れた目が、痛々しい。俺の手に重ねられた主任の手の細さに、なぜか俺の胸が痛くなる。 あれ? この人って、ここまで弱々しかったっけ? 揺れる睫毛に、噛みしめられた唇。 涙のあとが残る頬。 少しだけ癖っ毛のある、ふわふわした髪の毛。 「主任、」 この人は、こんな人だったっけ? 「主任……、」 吸い込まれるようにして、俺は顔を近づけた。鼻がぶつかり、主任が目を開く。潤んだ瞳に見つめられ、そのまま、唇を重ねた。 驚きの色が浮かぶ。 口は自分が塞いでいるくせに、主任に名前を呼ばれたような気がした。 「……っ、」 上唇を自分ので挟み、それから軽く甘噛みした。主任の唇、すげぇ柔らかいんだな。漏れる吐息も、甘い。 頬に置いていた手を後頭部へと回し、もっと引き寄せた。逃げられないように、頭を固定する。主任はしばらくして、行き場を失った自分の手を俺の背中に回してくれた。 遠慮がちに、そっと、シャツを握られる。

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