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分かったことは。(12)
主任は抵抗しないし、俺もキスをやめる気はないし、どんどんエスカレートしていく。唇で遊んでいたけれど我慢できなくなって、中へと舌を差し込んだ。
俺、何やってんだろう。ちょっと嫌いになった上司に、しかも男に。
泣き顔見てたらたまらなくなってキスしてしまったとか、シャレにならない。
それでも、そんなことはどうでもよくなるし、主任を泣かせてしまったことも、何もかも考えるのがめんどうになった。
キス、気持ちいいし、やめられないんだけど。
絡められる舌の感触が、熱が、たまらない。必死についてきながらも苦しそうに息を吸う主任の口を、少しの酸素もやらないとでも言うように塞ぐ。俺のシャツを掴む力が強くなり抵抗しているふうにも取れるけれど、やめてやるつもりはこれっぽっちもない。
けれど、さすがに限界らしく、主任の足の力が抜け、へたりと座り込んでしまった。口の端からこぼれている唾液と赤く染まった頬、荒い息づかいがそそる。
思わず俺も座り込むと、そのまま、もう一度口付けた。
今度は軽いキス。すぐに離し、主任の反応を伺う。すると、また泣き出してしまった。
せっかく涙が止まっていたのに。
ああこれは、完全に俺のせい。俺が、悪いことをした。
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