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分かったことは。(16)

俺は慌てて主任の後を追った。相変わらず廊下は暗いままだけれど、それでも主任はちゃんと見えた。     急いで駆け寄り、背中から抱きしめる。     「キス、自分でも分かってないけど、仕返しじゃないです」 「……っ、」 「確かに、主任のことを今回のことで悪く思ったから、ひどい当たり方をしてしまいました。でも主任の告白、全然嫌じゃなかったです。主任のこと、嫌いじゃないです」 だから──と、まとまらないままに言葉を続ける。 「ゴールデンウィーク、一緒に過ごしませんか? 俺、主任が思ってくれたように、二人でいたいと思いました」 「……っ、なんで、」 「主任のこと、知りたいと、そう思ったから」 「……っ、」 「会社でですが、俺と一緒に、残りの連休過ごしませんか?」 言葉での反応はないけれど、主任は小さく頷いてくれた。俺はもっと、抱きしめる力を強くする。 「それから、せっかくおにぎり買って来てくださったから。オフィスに戻って、一緒に食べましょう」 俺はそう言って、固まって動けなくなってしまった主任を抱き上げ、そのままオフィスへと戻った。力が抜けて抵抗せずに大人しくしている主任が可愛く思えるし、新鮮だ。 こんなゴールデンウィークも、悪くないかもしれないと、そんなことを考えた。 END

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