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鯉のぼりの思い出と。(1)

「なぁーにやってんのさ」 「……あでっ、」 突然後ろから聞こえた声に驚き、俺はバランスを崩してその場に倒れてしまった。大きな青い鯉のぼりに片足を突っ込んだまま、顔を思いっきり床に打ち付ける。 何もかもが、最悪だ。 ほんの出来心がこんな事態を招くだなんて。 「トモ、お前何やってんだよ。大丈夫か?」 足に絡まった鯉のぼりとバタバタ格闘していると、奴が俺の部屋に入って来たのが分かった。いつもそうだ。幼なじみのタカは、俺の都合はお構い無しに好きなときに窓から勝手に入ってくる。 家が隣同士で、タカのベランダから簡単に俺の部屋のベランダへと移れてしまうから、まぁ仕方ないと言えば仕方ないんだけど。 でもだから、今だってこんなところを見られてしまったんだ。 小さい頃、タカと一緒によく中に入って遊んでいたこの鯉のぼりを、たまたま見つけて。懐かしく思って自分の部屋に持ち込んだ。 さすがに大きくなったから、昔みたいに二人で入ることはできないだろうけど、俺一人なら余裕で入れるだろうって、それを試しているところにまさかのまさかでタカが登場。 「いつ見ても、トモは変なことやってんのな」 「うるせぇ、見んな! どっか行け!不法侵入野郎!」 「不法侵入? 今さらじゃん」   「……っ、バカ!」 「語彙力付けような?」 「ばっ……、アホ!」 「はいはい」 「はいはいって言うな!」 

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