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鯉のぼりの思い出と。(2)

嫌みなタカに怒鳴り散らすも、鯉のぼりが足に絡まったままの姿だから何の意味もない。 バカだとかアホだとか、言ってる俺がまさにその言葉通りだし。 タカが俺のこと笑うのも無理はない。 「トモ」 「……んだよ、」 窓から侵入してきたタカは、少しずつ俺の方に近づいてきて、それからそこに座った。 俺を鯉のぼりから助けるつもりもなく、ただそこに座ったタカは、さっきまで俺のこと笑ってたくせに、急に優しい顔になった。 「ただいま」 「……っ、」 手を伸ばし、タカが俺の髪をわしゃわしゃと撫でる。 その手の温もりが、たった二ヶ月振りくらいなのに、とてつもなく懐かしくて温かく感じた。 「俺と会えなかったの、寂しかったんだろ?」 「うるせぇ」 「だから、鯉のぼり見つけて遊んでたんだな?」 「別に、遊んでねぇし」 図星なことを言われ、語彙力無しの俺はそれ以上もう何も言えなくなった。 ……そうだよ。寂しかったんだもん。すげぇ、寂しかった。 保育園から高校までずっと同じで、たくさんの思い出を一緒に作ってきて。 俺の中でタカと過ごすことが当たり前だったのに、タカってば県外の大学に行ってしまったから。電車で簡単に行ける距離じゃない。飛行機使わなきゃいけないくらいに遠い。そんな金、どこにあるってんだ。 このゴールデンウィークに帰って来てくれたから今回はこうして会えたけど、次に会えるのは夏休みだ。

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