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鯉のぼりの思い出と。(4)
「トーモ、」
「うるせぇ」
「久しぶりに会えたのに、ツンツンしすぎじゃね? 何が気にくわないんだよ」
「だから何でもないってば」
「なくはないだろ?」
「ないって!」
寂しい寂しい。すんげぇ寂しい。お前に会えた今も嬉しさより、どうせこの時間はすぐに終わってしまうって虚しさの方が大きいんだ。タカはすぐに、俺のこと置いて行っちゃう。
またしばらく、会えなくなる。
「何もねぇよ……」
「トモ、」
「何もないから、ない、からぁ……」
「……トモ?」
こみ上げてくるもわもわした感情を、抑えることができなかった。涙になって、一気に溢れ出る。さっきまで騒いでた俺が急に泣き出したもんだから、タカも困った顔をしている。
仕方、ないだろ。だって俺、タカのこと好きなんだもん。
タカとは幼なじみで、タカもそうとしか思ってないんだろうけど、それでも俺はもう随分と長い間、タカのこと幼なじみだとは思ってなかった。
「トモ、どうしたんだよ」
「……うぁ、」
好きの気持ちが今までより大きくなった。会えない時間、俺はいつもタカのことを考えてる。二人とも好きなテレビを見ながらタカも今これ見てるかなぁ? って考えたり、二人で歩いた道を通りながら話の内容を思い出したり。
タカも、俺のこと少しは考えてくれてるかなぁ? って、でもそんなわけないかって落ち込んだりしてた。
声しか聞けないから電話はしたくないし、メールたくさんしたらウザいかなって思ったらそれもできないし。
そんなふうにぐるぐると、ずっとタカのこと考えてたんだよ。
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