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鯉のぼりの思い出と。(7)

「俺、今、自分のことバカだって思った」 「気づくの遅いな」 「ごめん」 「そうやって変なとこで素直なお前も可愛くて好きだから許してやる」 「ありがと…………え?」 何で俺が謝って、許しを得なきゃいけないのかって思ったけど、途中に聞こえた言葉に固まる。え、だって、今。 「腕を出せ」 「はぁ?」 「いいから腕を出せって」 言葉の意味を考える間もなく、タカが俺に腕を伸ばすように指示し、そこに頭を乗せる。腕枕、させられているみたいだけど、さすがに重い。でも引き抜こうと引っ張ってみても全然動かない。 仕方がないって諦めた時、突然くるりとタカが寝返りを打ってまた俺にキスをした。 「キスしたくらいじゃおバカなトモは分からないだろうから」 「何がだよ」 「言ってやらなきゃだよなぁ」 俺の頬に指先でそっと触れると、タカがかぷりと耳を甘噛みした。吐息がかかって、ぞわぞわする。 「トモ」 「……なに?」 「トモのこと、好きだよ」 「え?」 「大切だって分かったから、俺のものにしておかなきゃ。安心して大学生活送れないからな」 にこりと、余裕そうな顔でタカが笑う。お前も俺のこと好きだから文句ないだろ? って、そんなことを言いたそうな顔。いや、実際に文句はないんだけど。ないに決まってる。けど、けどさ。

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