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僕らはそれを愛と呼ぶ(1)
「今日の体育、すっげぇ疲れたなぁ」
「お前めちゃくちゃ動いてたもんな、無駄に」
「無駄に、は余計だろ?」
「余計じゃなくて、事実だろ」
夕焼け色に染まる空をなんとなく見つめながら、今日も河原と一緒に仲良く下校。
小さな石ころを蹴り合ったり、他愛のない出来事について語ったり。
学校からの帰り道も、河原と一緒にいられるだけでキラキラと輝いて最高に幸せな時間になる。
俺は緩む口元を誤魔化すために、意味もなく河原の肩を叩いた。
「……って、何だよ」
「何でもねぇよ」
「はぁ? じゃあ叩くな」
こうやってくだらないことで言い合ってばかりだから、俺が今、このまま手を掴んで河原のことを連れ去りたい──って本気で考えたりなんかしてるってことを河原は知らないに決まっている。
でも本当、そういう気持ちになることって多いんだ。
河原と二人だけでいられる世界に行きたい。
「はっ、」
そんなことを考える自分に苦笑していると、どうしたの? って河原が俺を見つめた。
その顔が可愛くって、またそれに頬が緩む。
けどやっぱり、胸の奥で何かが引っかかっていて。気づかない振りができないほどの痛みを、俺の心に残していく。
「武井」
「ん?」
「最近お前さぁ、ニヤニヤしてるって思ったら、途端に泣きそうな顔になるよなぁ」
「……まじ?」
「うん、まじ」
図星なことを言われ、少しだけ焦る。河原って、思ったより俺のこと見てるんだな。
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