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君と会える日(1)

僕の体は、雨でできている。 いや、できていると言ったら少し語弊があるけれど、僕には雨でできているとしか、説明ができないんだ。 だって僕は雨の日にしか、ちゃんとした僕でいられないから。 雨でできているからと言って、体が常に透けてるとか、そういうわけじゃない。 見た目だって、触り心地だって普通の人間と一緒。 みんなと一緒に勉強もするし、遊んだりもする。 ただ、それができるのは、雨が降っている日だけだってこと。 自分でもよく分からないけれど、僕の体は雨が降らないと消えてしまう。直接雨に触れてなければならないってことはなくて、僕が外にいるだとか中にいるだとか関係なく、僕からそう遠くないところで雨が降っていればいいのだ。 だけど、消えてしまうと言っても存在そのものが消えるわけじゃない。 みんなからは見えなくなっても、僕はそこには存在してる。だから僕は消えてしまってもみんなの顔を見ることはできる。でもそれは、僕にとってすごく寂しいこと。 「時雨くん、今日は雨が降ってるから良かったね」 「うん!」 「体が透明になっちゃっても声が聞こえるからいいんだけど。触っても何も感じないから、やっぱり見えてないと寂しい」 「そう言ってもらえて、僕はとっても嬉しい。ずっと雨が降ってたらいいのになぁ」 雨が降ると、本当はめんどくさいはずなのに。 クラスのみんなは、「それでも時雨くんに会えるなら雨がいい」って言ってくれる。 僕は本当に、幸せ者だなぁって思うんだ。 “みんな、ありがとう” そう言って笑った時、誰かが一人、「あっ」と大きな声を出した。

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